本田のワントップ布陣は有効だったのか?
ザックジャパンのヘッドコーチ格、ステファノ・アグレスティ氏が左隣に座り、アルベルト・ザッケローニ監督へ必死に話しかけている映像が何度も映し出された。ACミランやインテル、ユベントスでコンビを組んできた懐刀から助言をもらっても、指揮官の表情には明らかに迷いが刻まれていた。 後半19分と21分に立て続けに失点を喫し、コートジボワール代表に逆転を許した直後から、日本代表の前線の布陣はまるで猫の目のようにクルクル変わった。同22分にワントップの大迫勇也に変えて大久保嘉人が投入され、28分には香川真司と岡崎慎司が2列目の左右を入れ替えた。しかし、直後にベンチからザッケローニ監督の指示が飛ぶ。次の瞬間には本田圭佑がワントップに回り、大久保が左サイド、香川がトップ下、そして岡崎が元の右サイドへと戻る。同41分に香川に代わって投入された柿谷曜一朗がワントップに入り、本田が再びトップ下に戻った。 ■本田をワントップに起用した理由とは 23人の代表メンバーを発表して以降、ザッケローニ監督はワントップの候補は柿谷、大迫、大久保の3人だと明言している。4年前のワールドカップ・南アフリカ大会で務めているとはいえ、ブラジルの地でいきなり本田を据えた理由はどこにあるのか。 元日本代表MFで、現在は解説者を務める水沼貴史氏は「息が上がっているように見えたし、失点する前あたりから全然動けていないようだった」と、本田の運動量が急激に低下したことに起因していたのではと推測する。「日本は本田に限らず、フィジカルのコンディションがよくなかった。だから動きが緩慢になり、プレッシャーをかけようにも行けなくなってしまった。ザッケローニ監督がワンチャンスで決められる力はやはり本田にあると判断したならば、本田を前線に残すことで休ませるというか、守備の負担を軽減させることに近い意味合いが込められていたのかもしれない。大久保が左サイドに回ったのは、守備のことも考えてのことかもしれない。日本の左サイドからクロスを上げられ、2度とも失点しているので、そのあたりの守備の負担を体力的にフレッシュな選手で補おうとしたのではないか」。 ■対照的だったコートジボワールとのベンチワーク もっとも、約20分の間にワントップが3度も変わる慌ただしさは尋常ではない。ベンチの迷い、あるいは混乱は、当然ながらピッチにも伝わる。運動量が激減していたこともあり、ほとんどチャンスすら作れないまま黒星発進を告げる主審のホイッスルが鳴り響いた。スクランブル的な布陣は不発に終わった。大黒柱のディディエ・ドログバを後半途中から投入し、日本の守備陣へ与えるプレッシャーを一気に増幅させることに成功したコートジボワール代表のサブリ・ラムシ監督のさい配とは、あまりに対照的だった。