労働力調査が示す若者の「人手不足」 飲食業や建設業以外にも広がる恐れ
5月30日に発表された統計では、完全失業率が3.6%(季節調整値)で前月と比べて横ばい、有効求人倍率は1.08倍で0.01ポイント上昇でした。これは改善が鈍っているというよりは、もうすでに底あるいは上限に近いということでしょう。振り返ると、完全失業率は昨年の4月は4.1%で、一昨年では4.5%でした。 このような雇用環境の改善には景気回復の他に、人手不足による影響があります。話題になっているのはファーストフードや居酒屋、建設業での人手不足ですが、中期的に見ると今後は、もう少し広い範囲で人手不足が進むでしょう。
現在、15~64歳の人口は毎年100万人規模で減少する一方で、その分65歳以上が増えるという、労働における超少子高齢化が進んでいます。今のところは、高齢人口が相対的に増えていることが主な理由ですが、まもなく若者の減少がより目立つようになります。 図は国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(平成24年1月推計、出生中位(死亡中位)推計)」で作成した15~64歳人口と65歳以上人口の、前の年と比べた増減(人数)です。(この統計での増減では、64歳から65歳の出入りで人数が2重に数えられていることに注意。) 実は、15歳と65歳の人口差は昨年から今年にかけてが最も大きいものになっているのです。 図は15歳と65歳の人口変化を捉えています。ただ、実際の退職者は60~65歳が多いでしょう。また、働き始めるのは18~22歳前後ですので、どちらの場合もややずらして図の意味を考える必要があります。すなわち、5年前頃から退職者増加が続いていたところへ、若年人口の減少の波が訪れ始めたため人手不足が意識されているのです。 たしかに、ニュースに報道されている人手不足は、若者というキーワードに当てはまる職種のように思えます。
さて、発表された完全失業率の統計(総務省統計局「労働力調査」)に戻ります。働いているか、働く意思のある人の数を労働力人口といいますが、上記のような人口差のため、最近、その増減に特徴が出ています。 ※2014年4月 労働力人口の増減(対前年同月、実数) 15~64歳: -57万人 (男 -29万人、女 -29万人) 65歳以上: +47万人 (男 +23万人、女 +24万人) 若者の労働力が減少する一方で、高齢者の労働力が増えているのです。そして、就業者(実際に働いている人の数)も同様に高齢者が増えて、若年者は減っています。 ※2014年4月 就業者の増減(対前年同月、実数) 15~64歳: -17万人 (男 -4万人、女 -13万人) 65歳以上: +43万人 (男 +20万人、女 +22万人) 注目したいのは、15~64歳の男性の就業者数の減少(-4万人)が、労働力人口の減少(-29万人)に比べて顕著に小さいことです。女性もですが、とくに男性・若者の人手不足がはっきりと出ています。(65歳以上就業者の43万人増加も驚きです。)