「シンヤコヅカ」旧友への感謝をショーに込めて 自作の絵本に着想した2025年春夏
コレクションのムードはファンタジーだが、「実は僕のリアルが詰まっている」と小塚デザイナー。ファッション業界に入る後押しをしてくれた友人と疎遠になってしまった過去の経験を、絵本で表現したのだという。悲しみを経て行き着いたのは、ドローイングを服に発展させるクリエイションを、さらに昇華し続けるしかないという思いだったのではないか。その決意が、“picturesque or die(情景を描くか、死か)”と名付けたコレクションタイトルに表れている。
感謝を伝えるランウエイ
次の10年を見据えて
とはいえ、全体のムードは軽やかだ。22年春夏シーズンのリブランディング以降から築き上げてきたファンタジーなコヅカワールドは、デザイナーのあらゆる体験をふわりと包み込み、リアルとファンタジーのバランスを保っている。「自分の中の天秤が、水平になるのがいいコレクション」。消費者の支持も得ており、売り上げは伸長。前年比130%で推移し、特に海外からのEC売り上げは前年比200%を記録した。
ショーを終え、小塚デザイナーは笑顔を見せた。「実は会場に、疎遠になった友人たちが来てくれている。今日は、自分のきっかけを作ってくれた人に感謝を伝えるランウエイにしたかった」。内向きなクリエイションであることを強みに変え、ここ数年で急激に世界観を確立させた「シンヤコヅカ」にとって、今回のコレクションはさらなる10年を見据えた第一歩だ。缶ビール片手に息切れしながら、「来シーズンも最高っすよ」とあっけらかんと笑った。