琉球ゴールデンキングスの桶谷大HCが語る、叩き上げコーチの先駆者としての想い(後編)「自分が前を走らないと後継者も育たない」
「言い方は悪いですが『人間力を高めるために必要なシーズン』だった」
――自身のコーチングに対する意識や取り組みについて、ここ2、3年で変化はありますか? 今はよりカルチャーをより強固なモノにしていくこと、自分がいなくなったとしてもキングスに良いカルチャーを残さないといけないと感じています。これは今までの先人がキングスでずっとやってきたことであり、それを一番意識しています。バスケットの個人スキル、戦術については自分が前に出てバンバンやることは、以前と比べると少なくなりました。人に任せることが、人を育てることだと思うので、そういった変化をしているところです。 ――コーチングスタッフでいうと、今シーズンはかつての中心選手であるアンソニー・マクヘンリーが加入しました。彼が入ったことによる変化をどう見ていますか。 これまでキングスでは、プロで中心選手として活躍したコーチはいなかったです。マック(マクヘンリー)による元トップ選手からのアドバイスは、選手にとってよりダイレクトに届いたと思います。ただ、マック自身も「自分はコーチになりきれなかった」みたいなことを、一緒にランチをした時に言っていました。彼はとても良いコーチです。ただ、どんなに歳を重ねても誰だって悩みます。答えは参考書に載っている訳ではなく、それを解決していくのは簡単な話ではない。だからこそ「コーチって大変だな」とは話しました。 ――現状維持は停滞と考える中、マクヘンリーの存在も含めコーチングスタッフにも今までにない刺激を入れていくことは必要だと思いますか。 ここ何年かはいろいろなコーチが来てくれて、少しずつ変化を起こしてくれています。そういうものは必要かなと思います。例えば(かつての名指導者である)いすゞ自動車の小浜(元孝)監督もそういうことをよくやっていました。小浜監督もどちらかといえば人を育てる姿勢の人で、外部からトーマス・ウィスマン(元宇都宮ブレックス、横浜ビー・コルセアーズHC)のような外国人コーチを連れてきて、自分の足りないところを補っていました。そういったところは参考にしています。 ――あらためて2023-24シーズンはどんな1年だったと、総括することができますか。 言い方は悪いですが「人間力を高めるために必要なシーズン」だったと思います。優勝した次のシーズンがこんなに難しいのか、と思わされるシーズンでした。ただ、それでも最終的にファイナルにまで行くことはできました。自分たちの心の持ち方などについて勉強になるシーズンでした。 ――最後にファンへのメッセージをお願いします。 皆さんがどんな試合でも最後までついてきてくれて、キングスを信じて応援してくれたからこそ、自分たちはCSクォーターファイナル、セミファイナルで勝つことができました。本当にファンの皆さんには感謝しています。これからもいろんなことが起こると思いますが、キングスは沖縄をもっと元気に、沖縄のためにという精神で選手もスタッフも戦っています。そこだけはブレないようにこれからも戦い続けたいと思っています。
バスケット・カウント編集部