中国の自動運転企業「ホライズン」創業者がビリオネアに、IPO後の株価上昇で
かつて中国のハイテク大手バイドゥ(百度)で自動運転プロジェクトを立ち上げた人工知能(AI)科学者で起業家のユー・カイは、10月30日に彼の自動運転テクノロジー企業「ホライズン・ロボティクス(地平線機器人)」の株価が約16%も上昇して最高値をつけたことを受けて、ビリオネアの仲間入りを果たした。 ホライズンの会長兼CEOのユーは、同社の13%を所有しており、フォーブスは彼の資産を10億ドル強と推定している。現在47歳のユーは、北京を拠点とする同社が香港市場に上場してから1週間も経たずにビリオネアになった。ホライズンは、24日に今年の香港で最大の新規株式公開(IPO)を通じて54億香港ドル(約1000億円)を調達していた。 ユーは、2015年に2人の元バイドゥの社員たちとともにホライズンを共同創業していた。同社は、自動運転システムのソフトウェアとハードウェアの開発を行っており、最も高度なシステムは「Horizon SuperDrive」と呼ばれ、都市部やハイウェイ、駐車シーンで人間らしい自動運転を実現するよう設計されている。 また、同社は独自のアルゴリズムとソフトウェアを顧客にライセンス供与し、顧客が独自のカスタマイズ製品を開発できるようにしている。同社の顧客リストには、フォルクスワーゲン(VW)や現代自動車、BYD、吉利自動車、理想汽車などの27の自動車メーカーが含まれている。 ホライズンは、上場前に多くの著名な投資家から資金を集めており、その中には、中国の国有自動車メーカーの上海汽車(SAIC)や英資産運用会社ベイリー・ギフォード、インテルキャピタル、リチャード・リュウの5Yキャピタル、チャン・レイのヒルハウス・インベストメント・マネジメント、ニール・シェンの紅杉中国(旧セコイア・チャイナ)などが含まれる。 また、ドイツのフォルクスワーゲンは、2023年に20億ドル(約3000億円)以上を投じてホライズンとの合弁会社を設立し、経営権の60%を取得している。 ■学者から起業家に転身 ユーは、起業家に転身する前に機械学習に関する研究で学術界で名を馳せていた。江西省の南昌で育った彼は、電子工学を学んだ後にドイツに渡り、ミュンヘン大学でコンピュータサイエンスの博士号を取得した。彼はその後、NECの米国の研究所でメディア解析部門の責任者となり、コンピュータビジョンと機械学習に関する技術を開発していた。 2012年に中国に戻ったユーは、バイドゥに入社してAI技術に特化した「ディープラーニング研究所」を設立した。彼はその後、同社の自動運転プロジェクトを立ち上げ、ロボタクシー事業「Apollo Go」の基礎を築いた。 2015年にホライズンを設立した際、ユーは初期の困難に直面した。中国メディアのインタビューで彼は、会社の設立当初に「AIチップがクルマから家電までさまざまなものの脳として働き、人間のような機能を持つ製品を開発する」という目標を持っていたが、決定的なアプリケーションの見極めに苦労したと語っている。 ホライズンは2019年に独自のチップを搭載した初の運転支援システムを発表したが、その翌年に中国政府は、2025年までに高度な自動運転車の大量生産を目指す計画を発表していた。 ホライズンは、自動運転分野で上場を果たした中国企業の1つだ。中国のロボタクシーのスタートアップの「WeRide」は、25日にナスダックに上場した。自動運転システム用のチップを設計する中国のスタートアップの「ブラックセサミ」も8月に香港市場に上場していた。
Zinnia Lee