「AKBに戻りたい」卒業後に思いつめた宮澤佐江──手放した「キラキラの芸能界」に対する執着
なくした「キラキラの芸能界」に対する執着
「ほかにやりたいことが何も見つからなかったから、戻ってきたんだと思います。休業中、ドラマや映画など、お芝居を客観的に見て、『私ならこうするかな……』って考えてしまう自分がいました。それが嫌で休んだのにね(笑)。そういう自分に疲れてきたときに今の事務所(ホリプロ)の方に声をかけていただいて、ミュージカルのお仕事をいただきました。もうこれは、導かれたな、と思って」 1年の間に、宮澤の中で大きな変化が起こった。 それは、「キラキラの芸能界」に対する執着がなくなったことだ。 「なくなったというか、なくしたというか。考えてみたら、理想の自分に近づけないことに疲れ、不安になって……というのを、AKB時代から繰り返していました。でも、私らしい芸能生活ってなんだろう、ということを改めて考えてみたら、自分のペースで一歩ずつ、場数を踏んでいくことなんだな、と気づいたんですね。今からでも遅くないのかな、と」 舞台で一緒になった演劇人たちの影響も大きい。芝居の奥深さはもちろん、「キラキラな芸能界」を目指すことだけが表現者の目的ではないと学んだ。
「今は役者としてまだ勉強中ですが、やっぱり、歌って踊っているときが一番楽しい。太刀打ちできないと思って、歌から逃げていた時期もあったけど、ここ1年くらいでちょっとした成長を感じられるようにもなって。はじめは苦手意識を抱いたミュージカルですが、向いている部分もあるのかな……」 描いた未来予想図と、現実とがぴったりと合う人生は、ごくまれだ。 だが、自分自身で気づかない才能を、別の視点から見いだされ、開花させられることは、往々にしてある。 AKBの握手会に来ていたようなファンは目に見えて減った、と寂しがる宮澤だが、何度かの転機を乗り切り、しっかりと実力を蓄えている現在の姿には、新たなファンが増えていくだろう。 宮澤佐江(みやざわ・さえ) 1990年8月13日生まれ、東京都出身。俳優、タレント。「第二期AKB48追加メンバーオーディション」で合格。旧チームKの一員となる。AKB48メジャーデビューシングル「会いたかった」で初の選抜メンバーに。2007年にはAKB48として紅白歌合戦に初出場。2012年、SNH48に移籍。2014年、SKE48チームSを兼任し、同チームのリーダーに就任する。2016年、AKB48グループを卒業。2018年、芸能活動を一時休止。翌年、ミュージカル『ピーターパン』で芸能活動を再開した。