「AKBに戻りたい」卒業後に思いつめた宮澤佐江──手放した「キラキラの芸能界」に対する執着
卒業後の「理想像」と現実のギャップ……仕事をするのが怖い、AKBに戻りたい……
「そもそも私自身、こんな作品に出たいとか、ビジョンが明確じゃなかったんです。卒業後はとりあえず、来るもの拒まずでやってみよう、という感じでした。そこで、『これは私には合わないな』っていう畑もあったりして、いろいろと発見がありました。全部得難い経験なんですけど、正直、キツかったです」 特に、どんな仕事がキツかったのかと尋ねると、意外にも「ミュージカル」という答えが返ってきた。ミュージカルこそ、得意なのでは? 「ですよね(笑)。私、けっこうミュージカルに出してもらってるんですけど、今でも毎回、心がはち切れそうになるんですよ。ミュージカルって、演技力も歌唱力も、とにかく実力のある人ばかりが集まっている。私もステージの場数こそ踏んでますけど、声楽も勉強していないし、子役経験もないので、ミュージカルの天才たちに囲まれたとき、もう無理!って心が折れそうになりました。演出家やキャストの皆さんは、すごく優しいんです。でも、その優しさが怖かった。できない部分ばかりが見えてきて、自分で自分の首を絞めてしまう。不安と緊張で、倒れそうでした」 ぼんやりと抱いていたAKB卒業後の理想像と、当時の自分とのギャップが、次第に心の中で大きくなっていってもいた。 「すぐに大きな舞台が決まるとか、今思えば順風満帆じゃないですか。でもそのときの私は、“テレビで見ない日はない”とか、“フォロワー何万人”とか……そういう人でいたい、そうならなきゃいけないんだって思い込んでいたんです。憧れの芸能人になれていない自分、でも仕事はやりたいこととは違って難しすぎるとか。現状に満足できない自分に、毎日いら立っていました」 テレビでは、AKBがまだまだ華やかに活躍している。キラキラな世界から放り出されたような気がした。一人でもやっていけるはずだったのに、仕事をするのが怖い。AKBに戻りたい。そう思ってしまった自分が、悲しくて仕方がなかった。 「思いつめた揚げ句、『このまま引退するかもしれないけど、休業という形で休ませてほしい』と、当時の事務所の方にお願いしたんです。結局、1年だけ休んで戻ってきちゃったので、早すぎたかな、と自分でも思いましたけど」