アジア系黒人として「史上初」を重ねてきたカマラ・ハリスの「勝負アイテム」
新米検事補時代に培ったカマラを突き動かす強い信念
新米検事補として下積みを重ね、さまざまな活躍を見せたカマラは、2003年サンフランシスコ地方検事選挙に当選。しかし、着任早々、大きな壁にぶつかる。2004年4月、サンフランシスコ市警察の巡査がパトロール中にギャングメンバーに射殺されたのだ。 事件後、警察内部や市民からは犯人への死刑を求める声が上がったが、カマラは「死刑を求めない」と明言。これにより巡査の妻や多くの警官から強い反発を受けた。しかし、ハリス氏は一貫して死刑を拒否し、最終的に犯人には終身刑が言い渡された。 この決断は、サンフランシスコ警察との間に深い対立を残した。だが、逆風にも負けず、信念を貫き、公約を守り続けたハリスは一般市民からの大きな支持を受けた。彼女の信念と冷静な訴えは多くの心を打ったのだ。 その後、ハリス氏は違法薬物売買の再犯率を減らすための活動を先導し、検事補時代から温めていた「違法薬物売買初犯者のための社会復帰プログラム」を開始。初犯者に対して高校卒業や就職の機会を与えることで、犯罪の再発防止を目指した。 このプログラムに参加した人数は少なかったものの、再犯率の低さから成果が評価された。サンフランシスコ市民に広く支持されたカマラは、2007年の選挙で無投票再選を果たした。 少女時代の「みんなに頼られる上級公務員になりたい」という夢を、着実に実現していったカマラ。だが、彼女の目標はさらに大きくなり、「カリフォルニア州の人たちのために働きたい」「カリフォルニア州の立場の弱い人たちを守りたい」と思うようになる。 検事としてさまざまな活動をしたカマラは「弱い立場の人を守りたい」という信念をより一層強くして、カリフォルニア州司法長官選挙への挑戦を決意したのだった。
BLM運動が追い風となり、史上初の女性副大統領へ
カマラは、家族の支援と妹マヤの指揮のもと、2020年の大統領選に向けて精力的な選挙活動を展開。彼女はトランプ大統領の政策を批判し、多くの支持を集めた。 しかし、支持率が伸び悩み、2019年12月には資金不足を理由に選挙戦から撤退することを決断。撤退の際には、「バイデン候補を支持し、応援する」と表明し、将来の副大統領候補としての可能性を残した。 その後、全米で「ブラック・ライヴズ・マター(BLM※)」運動が拡大し、カマラは、トランプ大統領がデモを軍隊で鎮圧しようとしたことを「軽率で乱暴だ」と強く非難した。 ※BLM運動…アフリカ系アメリカ人の黒人に対する暴力や人種差別に抗議する運動のこと。2013年にフロリダで黒人の少年が射殺され、2014年にNYで白人警官が罪もない黒人男性を窒息死させ……という事件が頻発した中で、2020年のジョージ・フロイド事件を機に、#BlackLivesMatterというハッシュタグとともに抗議運動がが広がった。 彼女は他の民主党議員とともに、警察改革法案を作成。警官による容疑者の首絞め行為の禁止、ボディカメラの装着義務、違法行為が見られた警察署への独立機関による調査の推進を提案した。 2020年6月、バイデンが民主党の大統領候補に確定すると、カマラは副大統領候補として最も注目される存在となった。 マスコミは「黒人層の支持が鍵」と報じ、副大統領候補(ランニングメイト)指名する可能性が高まり、カマラに追い風が吹きはじめた。8月18日民主党がバイデン氏を正式に大統領候補に指名し、その翌日、バイデン氏が、カマラをランニングメイトに指名。長く苦しい選挙戦の上、史上初の女性副大統領となった。