「日本の城のような石積みの家に住みたい!」。難題に対して建築家が考えたのが、まさかのメキシコのピラミッドのような家…
圧倒的な石の存在感による気付き
さらに宇野さんには、圧倒的な石の存在感という新たな課題が浮上しました。想像以上の迫力に、計画していた他の素材が、すべて貧弱に見えてしまったのです。 そこで銅のサッシは重厚な鉄に変更。さらに床材や金物の素材やディテールまですべてを見直しました。「本来、素材とは表現手段や意味のあるものではなく、あくまでも″素材”でしかない。なるべくそこには意味をもたせず、自然な空間をつくるのが、住宅という建築には重要だと思います」と宇野さん。 石に負けない端正な建築にするには、できるだけ人工的にせず、自然に存在させることが重要なのだと気付かされたそうです。
職人の技術を最大限に生かした一期一会の建築
実は宇野さんは、設計にとどまらず、自ら施工まで手掛ける徹底的な現場主義の建築家。ゆえに現場での臨機応変な変更が可能で、最後まで責任を全うする姿勢を貫くからこそ、現場の士気も上がり、依頼者からの信頼も厚いのです。 この住宅でも、それらの長所が最大限に生かされました。現場で生まれた出来事を感じ取り、職人の技術を最大限に生かす形に導いて生まれる一期一会の建築といえるでしょう。