トランプ氏、クリントン氏抜け出すか? 「スーパーチューズデー」見どころ
クリントン氏が事実上の決着つける?
第2に、この点とも関連するが、「スーパーチューズデー」の結果を受けて有力候補へのバンドワゴン(勝ち馬に乗ること)が加速する点だ。その分、候補者指名争いの時間を短縮し、11月の本戦へ向け体力を温存することができる。 例えば、3月1日にヒラリー・クリントン元国務長官が圧勝すれば、各州の予備選の得票率に応じて比例配分される 「一般代議員 」のみならず、特別枠の「特別代議員 」も一気に上積みされるはずだ。特別代議員とは連邦議員や州知事、歴代の正副大統領、党幹部らを指し、代議員全体(4763人)の約15%を占める。一般代議員とは異なり、各州の予備選の結果に拘束されずに7月25~28日の民主党全国党大会(於:ペンシルバニア州フィラデルフィア市)で自由に投票できる。党大会での正式な指名獲得には代議員全体の過半数(2382人)が必要だが、クリントン氏はすでに712人いる特別代議員のうち453人から支持表明を受けている(サンダース氏は20人)。 3月1日に選出される一般代議員は878人(それまでの4州で選出された156人と合わせると一般代議員全体の約26%となる)。民主党は「比例配分方式」を用いているため、実際に獲得代議員数が過半数に到達するのは早くても4月下旬以降になると思われるが、3月1日に事実上クリントン氏が決着をつけてしまう可能性は高い。ちなみに2008年に同氏と大接戦を繰り広げたバラク・オバマ上院議員(当時)が過半数を制したのは6月3日である。
残された時間は少ないルビオ氏
一方、共和党の場合、2012年の予備選でミット・ロムニー氏が過半数に到達したのは6月5日と遅く、民主党内の予備選で不戦勝状態だった現職のオバマ大統領との戦いに向けた準備が疎かになってしまった。また、予備選を前倒して存在感を高めようとした州が多かったこともあり、今回から3月15日以降の予備選に関しては各州の判断で従来の「比例配分方式」に代わって「勝者総取り方式」の導入も可能になった。「勝者総取り方式」なら注目度も増し、かつ早期決着を促すことにもなる。 不動産王ドナルド・トランプ氏とすれば、3月1日に首位の座を不動のものとし、15日以降、一気に代議員全体(2472人)の過半数(1237人)を固めてしまいところだろう。 逆に、主流派(穏健派=エスタブリッシュメント)の支持を集めるマルコ・ルビオ上院議員とすれば、3月1日に同じ主流派のジョン・ケーシック知事と保守派のクルーズ氏を圧倒し、15日までに反トランプ票の唯一の受け皿になりたいところだろう。トランプ氏の党内支持率は約35%と決して高くない。しかし、残りの約65%を3、4人の候補で分け合っているようではトランプ氏の優位は揺るがない。ルビオ氏に残された時間はさほど多くない。2月10日に予備選から撤退した主流派のクリス・クリスティ知事は26日、ルビオ氏ではなく、トランプ氏への支持表明を明らかにしている。 ちなみに3月1日に選出される共和党の代議員は661人(それまでの4州で選出された133人と合わせると代議員全体の約32%となる)。共和党にも特別代議員はいるが全体の約7%と少なく、かつ各州の予備選の結果に拘束されるため、民主党に比べるとその影響力ははるかに小さい。7月18~21日の共和党全国党大会(於:オハイオ州クリーブランド市)までに代議員全体の過半数に到達した候補がいない場合は、全ての代議員に自由な投票を認めて党大会で決選投票を行うなどの解決策がある。