小林製薬、紅麹の健康被害で問われる“らしさ”、訪日需要や海外拡大もヒット不在が課題だった
小林製薬の医薬品は日本でしか買えないものが多い。とくに内臓脂肪燃焼をうたう「ナイシトール」や更年期症状改善の「命の母」が売れている。コロナ禍以前の2019年のインバウンド売上高101億円はコロナ禍で消滅したが、2023年は約74億円まで回復している。 医薬品は中国に限らず韓国や東南アジアからも引き合いがあり、ドラッグストアでのインバウンド主力商材となっている。小林製薬の商品も独自性や効能が評価され、訪日客のお土産需要をとらえてきた。
■利益率の高いヘルスケアを育成 小林製薬は2030年に向けて、海外でのヘルスケアを強化する方針を掲げる。2023年の海外売上高422億円のうちヘルスケアは20%だったが、2030年には同900億円の35%まで拡大させる目標。2025年1月には仙台の医薬品新棟が稼働予定で、肩こり治療薬「アンメルツ」などの海外販売に向けて生産能力増強を進めている最中だ。 小林製薬といえば、トイレ用芳香洗浄剤「ブルーレット」や冷却シート「熱さまシート」といった日用品が知られる。しかし現在、国内の稼ぎ頭は一般用医薬品などのヘルスケアに変わりつつある。2023年度の国内売り上げ1304億円のうち、利益率の高いヘルスケアは670億円と半分超を占めている。
コロナ禍を脱し、海外進出強化もこれからというタイミングで発生した、紅麹関連のトラブル。商品の品質面で会社の信頼が低下すれば、成長への”足かせ”となりかねない。 近年、日用品でかつてのような大ヒット商品が出せていないことも課題となっている。ブルーレットや芳香消臭剤「サワデー」などは、前社長の小林一雅会長が開発した商品だ。 現在の主力商品は、過去に開発したロングセラー商品が中心。会社がKPI(重要業績評価指標)として掲げる、売上高に占める新商品の4年間寄与率も、2016年の21.8%から2023年に11%まで落ち込んでいる。