リリー・フランキー「懐古的な想いではなく、文化という、人々の未来の為に」家族経営の老舗映画館「昭和館」が火災を乗り越え復活する日
ここが故郷の場所
手さぐりの暗中模索で、クラウドファンディングを立ち上げたのですが、不安はつのります。 最初のうち、反応は重かった。こんなに話題になっているのに、お金は集まらない。どうしてなのだろうと思うのですが、理由は思い当たりません。 資金の使い道は「映画設備・備品購入」として公表しました。いずれも焼失前の設備から、ざっと概算しています。 デジタル映写設備 1000万円 35ミリ映写設備 500万円 スクリーン 100万円 音響設備 700万円 座席(135席) 945万円 舞台設備(スピーカー・マイク等) 200万円 劇場内空調設備 400万円 券売機 100万円 ロビー備品(ベンチ・売店カウンター等) 200万円 事務用品代(PC・ポスターフレーム・事務机等) 150万円 飲食提供設備(売店商品提供) 100万円 合計で「4395万円」になりました。クラウドファンディングの目標金額では足りません。 デジタル映写機器の見積もりをお願いしたら、さらに金額は超過しました。円安による資材高騰もあって、経費はどんどん増えています。子ども食堂かバースペースになるはずのパブリックスペースも、ここの費用には入れていません。 クラウドファンディングの仕組みも、よくわかっていませんでした。3000万円をいただけたら、そのまま使えるわけではなかったのです。リリーさんのおかげで安くなっているのですが、運営会社に手数料をお支払いして、返礼品をお送りします。税金もかかります。 「そんなことも知らなかったの」 と、あとで家族に怒られました。 NPO法人「抱樸」の仕事から、直樹が帰ってきたとき……。抱樸の奥田知志理事長がくわしいので、クラウドファンディングのことを相談しています。 奥田さんは、最初10日ほどの推移を見て、「これなら最後の1週間で達成するな」 と断言するのですが、わたしには手ごたえがない。どこかの法人格にクラウドファンディングをやってもらって、物品で入れてもらうとか、他に方法もあったようですが、そんなことも思いつきません。 ハラハラドキドキしながら、毎日金額を見ていました。 こんなときにも、さまざまなイベントを仕掛けています。3月21日のドリアン・ロロブリジーダさんのトーク&歌謡ショウ。4月1日の松本清張記念館の「桜の宴」。4月22日には、仲代達矢さんと無名塾の弟子たちのドキュメンタリー映画『役者として生きる』を、北九州芸術劇場で上映しています。