昭和かよ、昭和じゃねーよ! 中年女性のやぶれかぶれに「令和」感 私たちは悪い時代を選んでいるのか 北原みのり
2024年もわずか。ここにきて、性犯罪刑法改正前に起きた性犯罪事件の裁判報道が相次いでいる。一つは大阪地検のトップと言われていた男性が準強制性交罪で逮捕・起訴された事件。被告となった元検事正はいったんは事実を認め謝罪を述べたものの、今月になって急に「同意があったと勘違いした」と無罪を主張しはじめた。もう一つは、実父から娘への準強姦罪。父親は実の娘と性交したことは認めたものの、「娘は抵抗できない状態ではなかった」と無罪を主張している。 2023年の性犯罪刑法改正が画期的だったのは、被害者がどれだけ抵抗したかを問われなくなったことだ。つまりは、「同意があったと思っていました。だから無罪です」という主張が難しくなった。恐怖でかたまったり、泥酔していたり、立ち場の違いがあったりして、「ノーと思うこと」「ノーと言うこと」「ノーを貫き通すこと」ができない状況での性交は「不同意性交罪」として罰せられるようになった。それでも、2023年以前の事件は、前の法律で裁かれる。そのため元検事正も父親も「同意があったと勘違いしたので無罪」という、時代に逆行するような主張を敢えてしたのだろう。事実を認め、謝罪し、罪を償ってほしいという被害者の声に向きあうことなく。そしてそのような主張がどれだけ被害者を絶望に陥れるか、その背後にいる無数の性被害者の心を傷つけるかなど、全くおかまいなしに。 元検事正の無罪主張、娘を性虐待した父親の無罪主張。あまりにも重たい年の瀬になってしまった。一歩進んではまた時計の針が戻る。短いタイムスリップをいくつも繰り返しながら、どんどん悪い時代を私は選んでしまっているのかと思うくらいに、なんだか女に厳しい社会になっているような気がするのは私だけだろうか。
北原みのり