【米ドル円】東京海上アセットマネジメントが振り返る…10月第2週の「米国経済」の動き
不安定ながらも円高傾向が続く値動きのなか、「円安トレンド」の転換が予感される現在、「米ドル円」に対する世の中の関心はかつてないほどに高まっています。そこで、来週の米ドル円相場の動向に影響を与えそうな、先週の米国経済の動きについて、東京海上アセットマネジメントが解説します。 【画像】「30年間、毎月1ドルずつ」積み立て投資をすると…
米国経済:9月の雇用統計は、景気後退懸念を払拭する内容
米労働省が公表した2024年9月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数(事業所調査)は前月差+25.4万人と、市場予想(同+15.0万人)を大幅に上回りました(図表1) 。 加えて、7月、8月の2ヵ月分が計+7.2万人上方修正された点も考慮すると、予想外に底堅い内容だったと言えます。もっとも、非農業部門雇用者数の変化について6ヵ月移動平均でみると、依然減少傾向が続いているため、トレンドが反転したと判断するのは時期尚早と考えられます。 9月の失業率(家計調査)は4.1%と、市場予想(4.2%)対比で改善しました(図表2)。 失業率は6月の4.1%から7月に4.3%へ急上昇し、サーム・ルール※に抵触したことで米景気後退への懸念が急浮上したものの、8月に4.2%、9月に4.1%と低下しています。 ※ 失業率の過去12ヵ月平均の最低値に対して直近3ヵ月平均が0.5%を上回った時に景気後退が始まるとされる これにより、サーム・ルールに基づく数値は8月の0.57%から9月に0.50%へ低下し、失業率からみた景気後退懸念はいったん和らいだ格好となりました。
失業数は増加傾向に
9月の新規失業保険申請件数は減少に転じ、失業率低下と整合的だったものの、10月第1週の新規失業保険申請件数は25.8万件と前週(22.5万件)から大幅に増加しています(図表3)。 これは、9月下旬に米南東部に上陸したハリケーン「ヘリーン」や、ボーイング社のストライキの影響によるものとみられます。 アトランタ連銀のボスティック総裁は8日、「米国経済の現状についてかなり楽観的だが、南東部を襲っているハリケーンによる潜在的な影響を注意深く監視していると」と述べました。当面、ハリケーンやストライキの影響を反映し、今後公表される新規失業保険申請件数はノイズが大きくなることが予想されます。これらの影響が労働市場の弱体化につながらないか、FRBは注視していくとみられます。 米労働省が公表した2024年9月の消費者物価指数(食料品及びエネルギーを除く、以下コアCPI)は前月比+0.31%と、市場予想(同+0.2%)を上回りました(図表4)。 この結果、FRBが注目する基調的なモメンタムを示す3ヵ月前比年率値は+3.08%と2ヵ月連続で伸びを高め、3%台に乗せています。インフレ沈静化に向けた動きは継続も、それには時間を要することを示す結果となりました。 コアCPIの内訳をみると、コア財は前月比+0.17%と7ヵ月ぶりにプラスに転じました(図表5)。 東海岸とメキシコ湾の港湾でのストライキなどの影響から、ウェイトの大きい中古車など幅広い品目で上昇した可能性があります。もっとも、均してみればディスインフレの動きは継続していると考えられます。 一方、コアサービスについては前月比+0.36%と、8月(同+0.41%)から伸びが縮小しました。特に、9月は家賃の伸びが縮小に転じたことが、コアサービスの押し下げに寄与しました。CPIの家賃に先行するジロー住宅価格指数の上昇率が縮小していることを考慮すると、今後も家賃の伸びは縮小していくことが予想されます。 9月の雇用統計は、市場の一部でくすぶっていた大幅利下げ観測を後退させる結果となり、11月、12月のFOMCでは、それぞれ0.25%の利下げ幅にとどまるとの見方が強まりました。 ボスティック総裁は10日、CPIが予想を上回った点を指摘したうえで、「利下げをいったん休止すべきかもしれない」と述べています。市場が織り込む利下げ予想に変化はないものの、今後の経済指標の結果次第では、11月の追加利下げが見送られる可能性は排除できないと考えられます。 東京海上アセットマネジメント ※当レポートの閲覧に当たっては【ご留意事項】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【米ドル円】東京海上アセットマネジメントが振り返る…10月第2週の「米国経済」の動き 』を参照)。
東京海上アセットマネジメント株式会社
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