福島県郡山市でNPO富岡町3.11を語る会伝承祭 手話で災害の悲惨さ表現 聴覚障害の吉田さんと山中さん
福島県のNPO法人富岡町3・11を語る会の伝承祭は27日、郡山市青少年会館で開かれ、聴覚障害のある吉田愛(めぐみ)さん(34)=福島市・県聴覚障害者協会=と山中沙織さん(38)=郡山市・NPO法人郡山市聴力障害者協会事務局長=が東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で被災した人々の苦悩を手話で伝えた。 二人は語る会が県聴覚障害者協会と連携して今年から開講した「手話による語り人育成講座」の受講生。被災地視察や、ろう劇団による表現指導を通して語り部の資質を高めてきた。 高校時代に吉田さんは広島県、山中さんは長崎県で原爆を体験した聴覚障害者の講話を聞いた。全身を使って悲惨さを訴える姿が今も脳裏に焼き付く。「耳が不自由な自分にも何かを伝えられる」と感じた当時の記憶が受講の決め手だ。 お披露目となった伝承祭では、語る会メンバーの体験を二人で再現した。避難車両の渋滞、避難所での食糧配布や植栽活動―。臨場感が高まるよう身ぶり手ぶりを加えた。吉田さんは「ろうあ者にしかできない活動を続ける」、山中さんは「障害者が貴重な体験を聞ける場所を増やしたい」と意欲を新たにした。
語る会の青木淑子代表は「手話は言葉を超えて事実の中にある思いを伝えられる」とし、来年度も講座を継続する方針を示した。 伝承祭は2年ぶり開催で約80人が参加した。吉田恵子さん(富岡町)と小林留美子さん(いわき市)が被災経験を語った。鈴木日陽(ひなた)さん(国際アート&デザイン大学校高等課程3年)が、語る会が制作した紙芝居を披露した。