放送のネット“文字おこし”は問題あるの?
テレビやラジオ、あるいはネット動画で著名人らが話した内容を活字に書き起こし、インターネット上で紹介する人が増えている。著作権のルール上は、許諾を得ずに無断でこれらを利用することは認められないはず。だが、「ネットで書き起こされる流れはもう止められない」と指摘する声もある。当事者たちは、どう考えているのだろうか? ネット上では、ラジオの放送内容をベースにしたブログなどがいくつも見られる。中でも、本格的なラジオ番組の書き起こしサイト「ラジおこし」は、今年5月に発足。ニッポン放送やTBSラジオ、文化放送など、主要なラジオ局が放送する番組の一部を書き起こし、サイトで無料で閲覧できるようにしている。1日2本ほどの記事をアップしており、月間の閲覧数(ページビュー)は早くも15万ほどに上っているという。 また、今年3月に放送されたフジテレビ「笑っていいとも!」の最終回では、司会のタモリさんとビートたけしさんのやりとりなども書き起こされ、ネット上で多数出回った。この結果、多くの人がテレビを見ずにそのやり取りを知ることとなった。 日本大通り法律事務所(横浜市)の喜多英博弁護士は「放送の内容を文字にすることは、『引用』の範囲内なのかどうかが問題になります。出所を明示した上でカギカッコをつけるなどして、自分の著作物と引用部分をきちんと区別して、あくまでも自分の著作物の一部として引用するならば著作権侵害の問題は起きません。が、まるまる文字起こしして、それ自体を商品として利用することは著作権侵害に該当する可能性が高くなります」と指摘する。 特に、映像がなく音や言葉だけで伝えるラジオにとって、活字による再現は比較的容易だ。権利が侵害される恐れが強いが、一方で若者のラジオ離れが進む中、ネットでラジオを話題にされることは、新たなリスナー開拓につながる機会にもなり得るはず。こうした動きを、ラジオ各局はどう受け止めているのだろうか? ニッポン放送(東京都千代田区)の担当者は「基本的に好ましくないと考えています。例えば、個人で楽しむために放送を録音するのは問題ない。が、人に貸し借りするのはアウト。それを考えると、放送のリアルタイムで打つならまた別ですが、おそらく録音して書き起こしているはずなので、そこで放送局の権利を侵害している可能性がある。また、再現されない前提で放送しているから、勝手に出されるのは演出上困るということもあります。書き起こしがラジオの宣伝になる側面もあるでしょうけど、本音はオンエアを聞いてほしいですね」と話す。