「自分は、何をしたいんだ?」…”闇落ち”した経営者たちに「共通して」欠けているモノ
アイデアと力を持つ人は倫理観を持たなくてはならない
2018年、ある事件が話題になりました。 「かぼちゃの馬車事件」といわれるこの事件は、シェアハウスとサブリースの仕組みを組み合わせた、不動産投資に係わる事件です。 S社は、女性専用のシェアハウスブランド「かぼちゃの馬車」を展開するS社は多くの人に、いわゆる不動産投資として「かぼちゃの馬車のオーナー」となるよう募集をかけるS社はオーナーに対して「サブリース契約」を展開不動産購入、建物の建築費用を負担できないオーナーでも、S銀行が融資を行う これだけ見ると、なんら問題はない不動産投資のケースです。 不動産賃貸料が高い都市部に少々狭くてもいい、安く家を借りたいが、安い物件だと女性は不安というニーズに対して、「女性専用のシェアハウス」という事業は、的を射ています。ニーズが見込めるならば、不動産投資のかたちで資金を集め、事業を広く展開していく流れは珍しいものではありません。
かぼちゃの馬車事件の“裏側”
しかし、実際には問題だらけでした。 S社がオーナーと契約したサブリース契約は、契約時に見込まれる家賃収入が過大に設定されており、支払われる家賃をS社の都合であとから減額できる契約になっていました。 オーナーは当初の契約で見込まれる家賃をもとに、収入を試算し銀行から借り入れる金額を割り出しますが、その試算が根拠のないものだったのです。しかもS銀行も融資の審査を甘く設定し、じゃぶじゃぶと貸しつけていました。行内規定に反した融資もあったようです。 結果、多くのシェアハウスに入居者は集まらず、オーナーは試算以下の収入しか得られず、銀行からの借入金さえ返済できない状態に陥りました。 S社は、シェアハウス建築にあたって建築会社から多額のキックバックも得ていました。S銀行とも協力してゆるい審査での融資を行い、大量のシェアハウスを短期間に展開したのです。
かぼちゃの馬車事件の余波
本当に「女性のためのシェアハウス事業」ならばよかったのですが、これでは「短期決戦でお金を儲けただけ」です。それも法的に問題はないものの、実際には詐欺に近い行為だといえます。 S社の創業者は、「女性だけのシェアハウス」というアイデアを持っていました。S銀行はお金を用立てる力を持っていました。 しかし、残念ながらそこに倫理観が欠けていた。 この事件は、実際に投資を行った人への被害にとどまらず、大きな弊害を残しました。不動産投資、不動産のサブリース契約への過度の不信感です。 不動産投資もサブリース契約も、どちらも適切に活用すれば、メリットがあるスキームです。しかし、この事件以降、負のイメージがつきまとうようになってしまったことは否めません。 『「自分の夢すら、いつか忘れる」…米国教授に学ぶ「数々の起業家たち」が陥ってきた「落とし穴」を回避する方法』へ続く
山川 恭弘