前を向く、笑顔で 苦境乗り越え 新たな1年へ 取材した被災者を再び訪ねた
元日に石川県の能登半島を襲った地震からあす、1年を迎える。発生直後に出会った、親元を離れ集団避難を余儀なくされた中学生、車中泊を続けた男性、廃業を考えた酒蔵…。豪雨にも見舞われる苦境を乗り越え、新たな1年へと歩み出そうとしている彼らを再び訪ねた。(写真報道局 安元雄太 桐原正道 鴨川一也) 【写真】石川県白山市に集団避難する輪島中の生徒を見送る家族たち ■輪島中の仲良し3年生、それぞれの道へ 家族に見送られ、不安そうな表情でバスに乗り込む中学生。1月に集団避難した輪島中バスケットボール部の生徒たちは約2カ月間、親元を離れた。 学校に戻り3年になってからも、体育館は避難所として使われており、部活の練習は市外の施設に向かわざるを得なかった。遠い地での集団生活も「あまり話したことなかった友達とも仲良くなれた」と主将の上杉理子さん(15)は明るく振り返った。 3月には卒業する。友人と残された学校生活を楽しみ、それぞれの道を歩み始める。(輪島市) ■廃業も考えた…新たな酒蔵を着工へ 倒壊した店舗から見つけ出した看板を手に「桜田酒造」跡地に立つ4代目の桜田博克(ひろよし)さん(53)。被災直後には廃業も考えたが、翌月には再建を決意。無事だった酒米を県内の同業者の協力を受けて仕込み、11月上旬に日本酒「能登大慶(たいけい)」を販売開始。来年6月には新たな酒蔵を着工する予定で、「この看板も新しい店に掲げます」と意気込む。(珠洲市) ■「故郷がどうなっていくのか見たい」 津波につかった軽自動車で車中泊を続けていた川口昇さん(68)。室内に入り込んだ泥を1カ月かけて手作業で除去し自宅に戻った。電気は7月に復旧したが、水道はまだ来ない。震災前に26世帯いた地区の住民は4世帯まで減ったが、「故郷がどうなっていくのか見たい」と、傾いた自宅に留まる。市内でボランティア活動をしながら生活を続ける。(珠洲市) ■「相撲で大きな結果を残すのが目標」 中学3年の岡田朋大(ともひろ)君(15)と小学6年の圭央(よしひさ)君(12)。相撲部に入っている朋大君は夏の県大会で優勝し「相撲で大きな結果を残すのがこれからの目標」と意気込む。圭央君も市のわんぱく相撲で優勝したが「中学では勉強を頑張りたい」と話す。被災直後、2人は倒壊家屋の前で遊んでいたが、今は同じ場所に仮設店舗が建設されていた。(珠洲市)