”自民過半数割れ”の立役者・上脇教授の告発「自民党は派閥だけでなく、全国で裏金作りをしているかもしれない」
先日の衆議院選挙では自民党の裏金問題の影響もあり、15年ぶりに与党(自民・公明)が過半数を割った。これは神戸学院大学の上脇博之教授が、市民オンブズマンとして「自民党の5派閥の政治資金パーティーの収入明細不記載」を告発したことがきっかけとなったと言っても過言ではない。その立役者である上脇教授に今回の選挙結果について、また次の参議院選挙の行方について聞いた。 【画像】上脇教授が「特捜部の捜査次第では今年中に処分される可能性も」と語る”裏金議員”
正月返上で150件以上を告発した男の思い
――上脇教授の告発が、捜査や派閥解消、法改正に結びつき、そして、今回の衆院選では15年ぶりに自民・公明両党で過半数を割る結果を生み出しました。告発がそんな大きなうねりになるなんて想像できましたか? 上脇博之(以下同) まず、説明しておきたいことがあります。今回の派閥の政治資金パーティーを巡る裏金問題は、共産党の「しんぶん赤旗」日曜版が最初にスクープしました。私が赤旗にコメントを求められたことから、追加調査を行ない、その告発に踏み切ったわけです。 調査をするなかで、ひょっとするかもしれないという思いはありましたが、ここまでの展開は想像できませんでしたね。 ――もっと興奮しているのかと想像していたんですが、落ち着いてますね……。 これまで検察に対し150件超の告発をしてきていますが、そのほとんどが政治家一人ひとりの違法行為さったので、そこまで大きな問題として取り扱われることは多くはないですからね。 それに、日々、政治資金オンブズマンとして、粛々と政治資金収支報告書をチェックし、おかしな点を告発することで、政治家に法をないがしろにさせないことが主眼にあります。検察が起訴するとは限りませんから政局に与えた影響は、通常、私にとっては副次的ですね。
裏金問題は派閥だけじゃない
――今回の裏金問題は、なぜここまで大きな問題となったと思いますか? 今回の裏金問題は、これまでのように政治家一人ひとりではなく、自民党5大派閥の組織的な問題だったので、マスコミも関心を持たざるを得ず、ここまでの広がりを見せたのだと思います。 また、この問題が確定申告の時期と被ったこと、市民が物価高で大変な思いをしていることも関係していますし、自民党が非公認の候補にも公認候補と同額の2000万円を「活動費」として振り込んだことも、反自民への追い風になりました。 ――今回の選挙で国民の生活がどう変わるのか、気になるところですが、来年7月にある参院選の行方も気になります。そのころには裏金問題は沈静化してしまうんじゃないかと……。 今回、衆院選で自民が負けたからといって、私は裏金問題が終わるとは思えないんですよ。 物価高で経済的に国民が大変なのは変わらないし、今回、裏金で落選した議員はいるけど、西村康稔議員、萩生田光一議員など、まだまだ起訴されていない議員はいっぱいいるわけです。 来年の参院選で、自民党が裏金議員を公認するのか、あるいは非公認でも活動費を振り込むのかがまた焦点になるでしょう。 私は今年の1月に「自由民主党東京都支部連合会」「東京都議会自由民主党」の都連関係2団体を東京地検に告発しました。20万円を超えるパーティー収入の一部につき収入明細が不記載になっていたからです。 「週刊新潮」が報じたところによると、現在、東京地検特捜部が捜査を開始し、すでに都連事務局幹部が任意聴取されているそうです。東京都だから裏金がつくられていればその金額は大きいはずです。 当時の都連の代表は萩生田光一議員で、特捜部が本気で捜査していたら、ひょっとすると今年中に処分が出るかもしれません。不正が明るみに出れば、裏金問題の第二幕の幕開けです。