『ポケ森』君たちはどう(ぶつの森 ポケットキャンプと)生きるか―母へ伝える『ポケ森 コンプリート』へのデータ引継ぎと、サービス終了ゲームの余生
2024年11月29日、モバイル向けアプリ『どうぶつの森 ポケットキャンプ』(以下『ポケ森』)がサービスを終了しました。 【画像】母に『ポケ森 コンプリート』を案内する様子。 本作はほのぼの生活シミュレーション「どうぶつの森」シリーズ初のモバイル向けアプリ。2017年11月の配信開始以来、約7年に渡り基本無料タイトルとしてサービスが提供されてきました。現在は『ポケ森』のデータを引き継げる、オフラインの買い切り版アプリ『どうぶつの森 ポケットキャンプ コンプリート』(以下『ポケ森 コンプリート』)が配信中です。 この『ポケ森』終了のニュースが報じられた際、筆者は故郷の母に連絡をとりました。というのも母がプレイしている唯一のゲームがまさに本作だったからです。 サービス終了を伝えられた母からは、「まあそろそろやめにしようと思っていたし、いい区切りになる。」というメッセージが返ってきました。しかし後に『ポケ森 コンプリート』が発表されたため、筆者は「せっかく長年やったのだし、データを引き継いでみてはどうか?」と母に勧めました。それに対し…… 母:毎月980円掛かるんでしょ? 筆者:え…?いやいや、これは買い切りのアプリだから一回購入すれば大丈夫だよ! 母:よくわからないし、引き継がなくていいよ。 どうやら母は、引継ぎ方法や本作が買い切りアプリであるといったことが分かっていない様子。 ゲーマーであればともかく、もしかすると案外こういったことが苦手な人や知らない人は大勢いるのかもしれない……と筆者は思い至りました。引き継ぎ期限は長めに取られていますが、多くの人が引き継ぎをスルーして、長年の継続が失われてしまうのはあまりにもったいないことです。 手順はそれほど難しくはありません。母に、ひいては『ポケ森』をプレイしてきた人々にそのことを伝えるべく、以下にその方法を簡潔にまとめます。 ◆『ポケ森 コンプリート』への移行に必要な手順 引継ぎに必要な作業は大きく分けて以下の3つ。 (1)『どうぶつの森 ポケットキャンプ』を起動し、「セーブデータの引継ぎ」を選択 (2)ニンテンドーアカウントを作成(アカウント作成済の場合はログイン)し、任意のアカウントに対し「この人にする」を選択 (3)購入した『どうぶつの森 ポケットキャンプ コンプリート』を起動、「つづきから」を選択し、(2)で選択したアカウントと連携 公式サイトでも引き継ぎの詳細が紹介されているので、ぜひ参考にしてみてください! ・セーブデータを引き継ぐためにご準備いただくこと ・ニンテンドーアカウント サポート ◆『ポケ森』から『ポケ森 コンプリート』へ さて、以上のような手はずを伝えるべく母のもとへ向かった筆者。無事に引き継ぎが終わり、『ポケ森 コンプリート』をプレイした感想を母に聞いてみました。 母 :プレイ感覚は『ポケ森』とそんなに違いはないね。『ポケ森』をやってる私の友だちはフレンドからのギフトを頼りにゲームを進めていたらしいけど、引き継いだらフレンドのシステムが変わってギフトがあまり貰えなくなったと言っていた。私は元々全部ひとりでやっていたから大丈夫だけど。 『ポケ森 コンプリート』はオフライン版買い切りアプリということもあり、これまでのようにオンラインで交流するソーシャルゲーム的なプレイスタイルが取れなくなりました。登録していたフレンドは新たに登場した「マイキャンパーカード」に保存され、非同期型の交流に変わっています。そのためフレンド同士で選択したギフトを贈り合うことはできませんが、代わりに1人プレイ向けのバランス調整がなされています。 母:前よりもミッションクリアで手に入るアイテムの数が多い。たとえば「ガーデンひりょう」は、『ポケ森』は一度に5~10個とかだったけど、いまは60個も貰える。全然違う。 ミッションクリアなどで入手できるアイテム量が増えたことに驚いている様子。大枠として『ポケ森 コンプリート』は、『ポケ森』がもともと持っていたゲームサイクルを保持しつつ、その制限が緩和されています。交換用アイテムの「リーフチケット」は「リーフストーン」に変わり、交換レートも以前より大幅に引き下げられています。 母:『ポケ森』が終わると聞いて、それならそれでちょうど区切りになると友だちと話していたんだけどね。でも引き継げるって知ったら……そりゃ続けるよね。 「どうぶつの森」シリーズはまず「ローン返済」という大きな目標があり、それがプレイヤーが暮らしを営むための最初の動機付けになっていました。一方で本作は、「チャレンジ」という小さくわかりやすい目標が複数用意されています。こうした目標設定と「1プレイは短時間で頻繁にアプリを起動する」という運営型ゲームらしいサイクルが、現在の母の生活環境に合っているようです。 思い返してみれば筆者が小学生の頃、ふだんはゲームをプレイしない母がたまたま『どうぶつの森+』(ニンテンドーゲームキューブ/2001)に触れ、その日の深夜までコントローラーを握っていたことがありました。母はもともと「どうぶつの森」にハマる適性を持っていたのでしょうが、『ポケ森』の持つ運営型ゲームのシステムがそれをブーストさせたのかもしれません。 ◆サービス終了後のオフライン版、その役割はアーカイブだけではない この機に筆者も本作を購入してプレイしました。筆者自身ニンテンドーDSの『おいでよ どうぶつの森』以来シリーズをプレイできていませんでしたが、音楽やビジュアルはかつて遊んだ「どうぶつの森」そのままで馴染み深く、すんなりと受け入れられました。 当初はいかにも運営型ゲームらしい時限性のチャレンジの存在に面食らいましたが、『ポケ森 コンプリート』ではそこまで躍起にならずとも遊べるバランスになっていると感じました。もともと「どうぶつの森」が実際の時間・季節に同期したイベントを楽しむゲームだったことを思うと、こうした運営型の形式に合致したシリーズだったのだな、と今更ながら納得してしまいました。 母の引き継ぎを手伝う前までは、正直なところ母がこれほど前のめりにプレイするとは思っておらず、筆者は意外に感じていました。冒頭にも述べましたが、これまでの記録が残ることこそ大事で、思い出として時折見返せたら良いだろう、と考えていたからです。 運営型ゲームが終了する際にプレイヤーとゲームが歩んだ道のりをアーカイブ化すること、それがオフライン版に期待される役割だと筆者は思います。ただ、どうやら母のようなプレイヤーにとってはこのゲームをプレイすること、あるいは終わらせることは、筆者が思っていたほど特別なことではなかったようです。 いま目の前に遊べるゲームがあるならただ楽しむというだけで、今後もこともなげに母の『ポケ森』での生活は続いていくのでしょう。今回は筆者の母を事例としましたが、それぞれのプレイヤーの分だけ『ポケ森』の引継ぎの形があるはずです。思い出として時々振り返ってもよし、これからの生活を楽しんでいくもよし。端末からゲームが起動する限り、どうぶつたちとまた会うことができるし、プレイヤーの生活は残り続けます。 母:でもまたしばらく経ったらお金を払わないと遊べなくなるんだろうね……。 筆者:いや、大丈夫だから!『ポケ森』はこれでもう全部入ってるから。 取材の最後になっても母はまだあまりわかっていないようでしたが、『ポケ森 コンプリート』は7年分のあそびとくらしがつまった完結作。引き継ぎ期限(2025年6月2日15:00まで)や早期購入割引(2025年1月31日15:00まで980円)はありますが、販売自体は現在のところ無期限です。これまで『ポケ森』をプレイしてこなかったプレイヤーも、新年の始まりにプレイしてみてはいかがでしょうか。
インサイド 林與五右衛門