自分は「詐欺師みたいなもん」ーー「腐り芸人」から売れっ子へ、ハライチ岩井は「変わった」のか
ーー誰かを笑わせたいということでしょうか。芸人の軸というのは。 そうです。笑って幸せを与えたいとかは全く思ってないですけど。 ーー確かにそれ、ちょっとエゴですもんね。 むかついてるやつに対して、笑わなくないですか。でも笑っちゃったら、ちょっと許容するじゃないですか。許容するってことなんですよ、笑うって。全員許容したってことですよ。 ーーなるほど。一番強いですね。殴るより強いですよね。 そういうことです。人のために芸人をやるなんてことはあんまり思ったことないです。 ーー理想の芸人像みたいなのはお持ちですか。 理想の芸人像か。あんま言葉減らされたくないなと思います。言っちゃいけないことが増えてほしくないんです。何言っても許される人になりたいです。 ーー減らされてるなと感じることはありますか? 減らされないようにしてます。 ーーそれはどういうふうに? クリーンなイメージつけないことじゃないですか。かといってダークなイメージもない。だから何でもしゃべれるんです。
24時間テレビとか絶対意味分かんない
ーー岩井さんは失敗しないイメージですが、今までにした一番大きな失敗ってどんなことですか。 よく「こんな最悪なことがあったけど、後から思い返してみればよかった」みたいな、何かいいことに変換するときがあるじゃないですか。そういうこともあると思うんですけど、そんな嫌なこともなかったんで。そもそも仕事してる感覚がないんすよ。 プロ意識がないのかもしれないです。仕事頑張んなきゃって思ってない。収録行って、話して、面白くて、帰ってきて、みたいな。労働だと思ってないです、まず。 ーーではどんなときに「労働」を感じますか。 やりたくもない努力をさせられてるときです。芸人同士でアイドルのダンスを完璧に覚えるみたいな。そんな面白くもねえし、大変だし。24時間テレビとか絶対意味分かんない。俺はもうそういうの全部やりたくないです、途中で切れちゃったりするんです。対価が見合わな過ぎるし。最終的な目標がお笑いじゃないことをあんまりやりたくないんです。それに対して努力したくない。 ーー他人に左右されず自分の意思で生きてる岩井さんが輝いて見えます。 詐欺師みたいなもんっすからね。別に。俺だって根拠なんてないですもん。ただ俺は大丈夫だって思ってるだけですから。それはたまたま今まで大丈夫だったってだけで。 --- 岩井勇気(いわい・ゆうき) 1986年埼玉県生まれ。幼稚園からの幼なじみだった澤部佑と2006年に「ハライチ」としてデビュー。ボケ担当でネタも作っている。アニメと猫が大好き。初の著書となった『僕の人生には事件が起きない』に続くエッセイ集『どうやら僕の日常生活はまちがっている』を上梓したばかり。