【サッカー日本代表 板倉 滉の「やるよ、俺は!」】第22回 オフ事情とW杯最終予選を板倉が語る
■サッカーを忘れて満喫したオフ事情 プレシーズンからハードな練習メニューを難なくこなすことができたのは、オフに長い休みが取れて、一度サッカーから離れられたから。 振り返ってみると、22年のW杯カタール大会以来、ほぼ休みなくスケジュールがずっとつながっていたように思う。6月11日、広島で行なわれた北中米W杯アジア2次予選のシリア戦を終えて、代表が解散した瞬間、正直ホッとした。3週間ほどの休暇。これだけの長いオフは記憶にないぐらい久しぶりだった。 広島から近いということもあり、せっかくだから、トミ(DF・冨安健洋)の地元・福岡でおいしいものを食べようと、彼の案内で(MF・田中)碧も一緒にそのまま博多へ移動した。 そこに鹿児島へ帰省していた師王も合流、4人でトミが予約してくれた海鮮料理の店で食事を楽しんだ。ウナギやラーメンも食べたが、さすが福岡、どれも最高だった。 誰かがふと「やっと(シーズンが)終わったなぁ」と。カタールW杯から悔しい思いをしたアジア杯を経て、現在のW杯予選まで、長い戦いだった。僕ら4人の中でサッカーの話題はほぼ出なかった。 6月15日、今度は大阪へ。友人である格闘家の大雅選手が「RISE WORLD SERIES 2024 OSAKA」という大会に出るので、応援に駆けつけた。格闘技観戦は人生初。 大雅が入場する姿を見て、涙が出そうになった。いざ試合になれば、素人目にも大雅がガンガンに対戦相手を押し込んでいたのがわかった。だが、一発カウンターを食らう怖さもあるので、非常にスリリングだった。 結果は大雅の判定勝ち。鳥肌が立った。試合後、リングを降りた大雅が真っ先に僕の所へ来てくれて、グータッチ。彼の突然の行動には驚いたけど、うれしかった。同い年。大雅もまた身ひとつで人生をかけて戦っている。自分もさらに頑張ろうと、大いに刺激を受けた。 6月23日には長野で自分が主宰する社会貢献活動KCPを開催。その翌日、スタッフと軽井沢へ移動した。クラブから与えられたオフ期間中の走りのメニューをこなして、夕方までみんなと過ごした後、ふと思い立って、ひとりで温泉付きのリゾートホテルに泊まることにした。 ひとりでの旅行も人生初。お目当ての宿に問い合わせてみると、たまたまふたつの部屋が空いていて、直接見ることもできたけど、ひとつ目の部屋は4つもベッドがあったので、さすがにひとりでは寂しすぎる(笑)。 もうひとつの部屋が大きなサイズのベッドひとつだったので、そこにチェックインした。 ホテルステイをじっくり堪能しようと思ったが、走りのメニューをこなし、ごはんを食べて温泉に入ったら、強烈な睡魔に襲われ撃沈。翌朝、6時45分に起床して、7時にはラン。8時半からは優雅に朝食をいただいた。 周りはカップルか家族連れだらけでソロは僕だけ。それでも、自然に囲まれた中で温泉に漬かり、サウナで整ったことでリフレッシュ。心身共によみがえっていくような感覚を味わえた。 人間、時にはすべてを忘れることも必要だと思う。行き詰まったら、一度リセットしてしまえばいい。ゼロからまたしっかり充電すれば、今までよりもきっといいパフォーマンスにつながるはずだ。僕も準備は万全。気持ちを新たに開幕戦へ臨みたい。 構成・文/高橋史門 写真/AFLO