【セントウルS】メイケイエール、ビリーヴ……人気の牝馬が活躍 秋競馬幕開けの一戦を「記録」で振り返る
「さよならは言わないで」サンアディユ
上述したビリーヴの圧勝劇は、2着とのタイム差が0.7秒。これは歴代セントウルSで2位の記録である。3位は0.5秒差で、こちらはマイネルラヴ、エイシンガイモン、シーイズトウショウ、タワーオブロンドンの4頭。マイネルラヴ、タワーオブロンドンはともにスプリント王者で、その実力は折り紙付きだ。そうした名スプリンターたちを差し置いて、最も2着とのタイム差をつけたのは、牝馬のサンアディユである。 サンアディユの馬名由来はフランス語で「さよならは言わないで」。父フレンチデピュティ、母父Caerleonという血統をもつ彼女は、デビュー後しばらくダートで使われていた。古馬になってから条件戦を3連勝してオープン入りするも、2戦連続で二桁着順に敗れた。そこで初めて挑戦した芝レースのアイビスSDで13番人気1着に激走。そこからは芝路線に専念した。 次走の北九州記念で7着(5番人気)に敗れたことで、セントウルSでは11番人気まで人気を落とした。レースでは序盤から前に行き、直線で後続を突き放す末脚を披露。2着カノヤザクラ、3着キンシャサノキセキに0.8秒差をつけて勝利した。 続くスプリンターズSでは1番人気に支持された。ローエングリン、プリサイスマシーンといった古豪やオレハマッテルゼ、スズカフェニックスといった実績馬も出走するなかでの1番人気は、それまでに見せた実力が評価されてのこと。実際、斤量が2kg軽い3歳牝馬アストンマーチャンには先着を許したものの、初GⅠで2着と好走した。次戦も京阪杯で勝利と順調なサンアディユだったが、突如悲劇が襲う。3月に栗東トレセンの馬房で倒れると、心不全により急死してしまったのだ。あまりにも急な別れは、当時の競馬ファンに大きな衝撃を与えた。 今年の出走馬たちが、無事に走り切り、これからも健やかな現役生活を送れることを切に願う。 ライタープロフィール 緒方きしん 競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。
緒方きしん