<シークレット同盟>ドラマPが明かす“女装男子”へのこだわりと、キャスト陣の魅力「松井さんは姉、長野さんは弟、長妻さんは太陽です」
松井愛莉が主演を務める「シークレット同盟」(毎週木曜夜0:54-1:24、読売テレビ)が現在放送中。原作はLero氏の韓国発の同名コミックで、大学内でも一目置かれるイケメン女子・詩杏(松井)と、そんな詩杏の前に、突如現れた容姿端麗な大学の後輩・律子(長野凌大)、さらに女性専用カフェの料理長、蓮見(長妻怜央)の“ワケアリ”な秘密を抱えた3人が繰り広げる、歪な三角ロマンスとなっている。 【写真】ドラマP、げんじぶ・長野凌大の表情管理に「感服しました」 この度、WEBザテレビジョンでは、同作のプロデューサーを務める伊藤愛氏にインタビューを実施。制作秘話やキャスト陣の魅力、今後の見どころなどについて話を聞いた。 ■“女装男子”に興味がありました ――「シークレット同盟」の実写ドラマを制作したきっかけは何だったのでしょう? 昔から宝塚歌劇が好きで、ベルサイユのばらなどの中性的なキャラクターに触れる機会が多く、“女装男子”というジャンルに興味がありました。過去に女装男子が出てくるドラマ企画を提案したことはあったのですが、どう3次元の人間で表現するのか…という難しさがあり、実現には至っていなかったんです。そんな中、今回エイベックスピクチャーズさんからの紹介で、韓国のキダリ社のウェブトゥーンを日本で実写ドラマ化してみないかという話をいただき、いくつかコミックスの原作を拝見していく中で「シークレット同盟」に出会いました。 ――「ドラマDiVE」という枠では、本作が3作目になりますね。 はい。韓国らしい刺激的な展開もさすがだなと思いましたが、心理描写が繊細でドラマ化しても存在に説得力があり、人間的に欠落した部分があるからこそ、魅力的なキャラクターになるだろうと直感で思いました。ビジュアル的にどう作っていくのかというハードルはありましたが、まだドラマ枠としても新しい「ドラマDiVE」という枠だからこそ、挑戦する価値のある面白い試みになると思いました。 ■松井愛莉の提案に「意気込みを感じた」 ――主演を務める松井愛莉さんの起用理由を教えてください。 松井さん演じる詩杏は、ヒロインでありながらもキラキラした女性像ではなく、男性恐怖症や過去の事件のトラウマという暗い部分を抱えた人物です。ただその一方で、周囲からその苦悩はあまり理解されておらず、一見、誰とも群れないクールな「かっこいい先輩」と思われているというギャップがあります。その2面性を演技力とビジュアルの両方で説得力のある人物として演じ切っていただけると思い、松井さんにお声がけをさせていただきました。 ――髪もばっさりと切って、撮影にのぞまれたんですよね? 髪をショートにする、という話は松井さん自ら提案してくださったんです。今回の詩杏という役への意気込みを感じ、とても心強く思いました。また、メインとなる3人が並んだ際にどう見えるかというバランスはすごく大切に思っていて…それを考えた上で、松井さんの抜群の高身長なスタイルは、律子と並んだ時は詩杏はカッコいい先輩に、蓮見と並んだ時だけ詩杏が女の子として見える、という大きな武器になると思いましたね。 ――長野さん、長妻さんも魅力的な人物です。起用理由を教えてください。 律子のキャスティングは本当に悩みました。キャスティングにとりかかるにあたって、日本や韓国の女装男子が出てくる実写作品を見てみたり、ボーイズグループがYouTubeやライブの企画で女装企画をしていることがあるので、そんな動画を片っ端から見てみたり…。 その中で、ただかわいいだけじゃない律子を実現できるのでは? と感じたのが長野さんでした。かわいらしい女装をするだけであれば、ある程度メイクなどで作りこんでいけるかもしれませんが、律子の本質はただかわいいだけの女性じゃないので…本来、奥底に隠し持っている狂気や暴走した愛情を長野さんならば目力に宿して表現してくださるのではないか、と思ったんです。 ――長野さんは7人組ダンスボーカルユニット「原因は自分にある。」のメンバーでもありますが、伊藤Pは動画を研究し尽くしたんですよね。 ライブ映像を見る中で、長野さんの“表情管理”を目の当たりにしました。曲のワンフレーズでも、さっきまでキラキラスマイルを天使のように振りまいていたのに、振り返った瞬間、鋭い眼光を放つ…その表現力がきっと律子でも生かされると感じました。また「いーあるふぁんくらぶ」という曲の踊ってみた動画を見て、普段のダンスではかっこいいのに、この動画の長野さんはすごくかわいかったんですよね。もともと女性が踊っている振り付けだからだと思うのですが、その些細なしぐさのニュアンスまで表現するコピー力に感服しました。 ■長妻怜央に感じた縁 ――長妻さんはいかがでしょう? 長妻さんは、蓮見像を考えた際に真っ先に浮かんできました。詩杏&律子と並んだ時に男性として存在感が出せるビジュアルと、詩杏でさえもつい心を許してしまいたくなる包容力の兼ね備えた蓮見になると思ったんです。 ちょうど「ブラックファミリア」(2023年、読売テレビ・日本テレビ系)に出演されていたのを拝見していて、お芝居の面でも安心してお任せできると思いましたし、スタッフからも話を聞いていてぜひ一度ご一緒してみたいと思っていたところで、まさにハマり役だと思いました。 実は最初どうしてもスケジュールが合わず、泣く泣く諦めるしかない…という状況で、お断りのご連絡をいただいた時もすごくやってみたかった役だった、と蓮見役への熱量をマネージャーさんから伺っていたんです。しばらくして「ブラックファミリア」のプロデューサーが長妻さんと会う機会があり、その中で「実は一度お断りしたものの、その後スケジュールが空いて…」という話が出たようで、それを聞いたプロデューサーから私のところにすぐに電話が来て…思ってもみないありがたいお話で、改めてオファーをさせていただきました。本当にありがたいご縁です。 ■キャスト陣の裏側を告白「三人でじゃれあってることも」 ――伊藤Pから見て、座長である松井さんは撮影現場ではどういった印象でしょうか? 役柄の詩杏以上に、松井さんご本人は男前でかっこいい姉さん! っていう感じです。長妻さんがムードメーカーとして現場を笑わせ、長野さんはみんなの弟的なポジションで「りっちゃん、りっちゃん」と愛でられているのですが、周囲がボケ担当が多めの中、松井さんがバシッとツッコミを決めてくださるような頼れる座長でした。 頼れる姿はもちろんオフの部分だけでなく、演技の面でも今回作品全体を引っ張り上げてくださったなと思います。シリアスなシーンも多い作品でしたが、そういう集中力が必要なタイミングで、松井さんの「ここぞ」という入り込み方は空気感で分かるというか…その姿を見て、一緒にお芝居されているほかのキャストの皆さんはもちろん、スタッフもその気迫でこのシーンに向き合うんだ、といういい意味の緊張感を作ってくださったと思います。 ――お三方は撮影現場でも仲良しなんですね。 仲が良いのはもちろん、本番とカットかかった後のメリハリがすごいです。シリアスなシーンも多い中、さっきまで血まみれになっていたかと思えば、カットがかかった瞬間じゃれあっていることも(笑)。スタッフに対してもフレンドリーに接してくださるので、本番中以外は笑いの絶えない現場でした。シーンとしては、気持ち的にも負担が大きい場面も多かっただろうなと思いますが、常にいい空気感で撮影を進められたのは、お三方のお人柄です。 ――伊藤Pのお気に入りのシーンやせりふはありますか? 5話で詩杏のもとへ律子が駆けつけて、部屋で詩杏に律子が寄り添うやりとりはお気に入りです。撮影としては結構早いタイミングでこのシーンを撮ったのですが、お二人があの温度感でこのシーンを演じてくださったことで、作品全体の二人の心の距離感や、関係性の方針が決まった大事なシーンです。いい意味での弱さ、人間らしさが出たシーンだと思いますね。 ■脚本に苦戦した“蓮見”というキャラへのこだわり ――視聴者が喜びそうな裏話があれば、教えてください。 全ての撮影が終わった後の取材で「どういう経緯でのキャスティングだったんですか?」と質問が長野さんに対してあったのですが、そういう話をご本人としたことが無かったので「実際どうだったか気になりますか?」と取材後私からも聞いてみたんです。そしたら「気になるけど、聞いちゃうとおしゃれじゃない気がするので聞かないでおきます」って答えた長野さんが、いい意味ですごく長野さんらしいなと思いました。現場では年上の人に囲まれて「りっちゃんかわいい」的な感じだったんですけど、改めてお話しする中で役者・長野凌大としての美学を感じて素敵だなと思いましたね。 長妻さんは、自分の出番が終わってもずっと現場に残って、スタッフと一緒にモニターを眺めていたりメイクさんとお話したりしていましたね。本当に太陽みたいな方です! そして気遣いの人でありつつ、その気遣いを周りには感じさせない、スマートな方だなと思いました。初めて皆が顔を合わせた本読みの時から、終わって帰るぞというときに「よし!じゃあ飲み行きますか!」とさらっと言ってのける長妻さんのフレンドリーさに、たくさん助けられました。 ――この撮影苦戦したなと思ったシーンはありますか? 脚本全体の話になってしまうのですが、蓮見の見せ方はとても悩んだポイントです。今回蓮見というキャラクターは、原作からオリジナル要素を足している部分でもあり、三人の中でも蓮見が一番真意が見えないまま後半戦まで進んでいくんです。ただ、本心を見せられるシーンが少ない中でも、ささいな目線だったり、表情だったりという部分を長妻さんが丁寧に演じてくださったので、きっと最終話まで見た後に、もう一度蓮見に注目してみると「なるほど!そういうことだったのか!」と面白がってもらえるポイントにもなっているのではないかと思います。 ■律子像を作るため「こだわりが詰まっている」 ――律子の女装姿で、こだわった点があれば教えてください。 長野さんの律子姿を初めて見たのは、まだ本読みも、衣装合わせもしてない段階でメイクテストをした時なのですが、これはいけるぞ!とスタッフが沸きました(笑)。おそらく長野さんご本人とメークさんだけ不安だったと思います(笑)。 メークは段階を踏んで少しずつ濃くしていき、もはや一番ナチュラルに近いメークの段階からかわいかったのですが、その中でもより女子に見えるラインを探しました。アイメークはがっつりして大丈夫だけど、チークまで入れると作りすぎてる感があるよね…とか、試行錯誤しましたね。あとはウィッグで眉毛を隠すのは死守しましょう! とか…1話ラストをご覧いただくと分かるのですが、眉毛が見えた瞬間、一気に印象が変わるよねという発見があり、いい意味でそれを律子・律樹のギャップにできるなと思いました。 ――服装のポイントはありますか? 服装は量産系、韓国系、地雷系までさまざまなジャンルを試しました。原作に寄せると結構フリフリになるので、いったんそこまで振り切ったものも着てみたり…。結果、ひざ下のロングスカートでコーデを組もうとなったのですが、もともと長野さんの肩幅は華奢なので、足腰回りの骨格さえカバーできたら女子のシルエットが作れそうだ、という作戦です。苦戦したのは意外にも靴で、男性サイズのパンプスでヒールありだと、詩杏との身長差が出てしまうので極力フラットなものを衣装さんに探し回っていただきました。 ■歪な関係性の行方を見届けてほしい ――今回関西ローカルということで宣伝にも力を入れているかと思いますが、視聴者からのSNSの反響をどのように感じていらっしゃいますか? キャストのファン、ドラマ好きの方、原作ファンの方からも、好意的な感想をいただけてほっとしています。オンエアが始まるまでは、第1段階として3人のビジュアルをプッシュしていこう! という方針だったので、情報解禁の際の“脳がバグる美ジュアル”といううたい文句で、まさに期待通りのいい意味で戸惑った反応をたくさんいただけたことがうれしかったです。 そこから放送が始まり「キャスト目当てで見始めたけど、内容自体面白い」と、ストーリーにもハマってくださっているようなお声もいただけるようになって、まさに作品としては理想的な形だと思っています。視聴者の皆様からの感想を見るのが毎日の楽しみなので、後半戦もたくさんSNSでつぶやいていただけたら嬉しいです。 ――最後に最終話に向けての見どころと、視聴者へのメッセージをお願いいたします。 家が燃えたり、注射器を刺したり…と、映像的にも衝撃展開が続いた中盤戦を経て、最終話へ向けてここからよりそれぞれのキャラクターの内面に迫る展開となっていきます。詩杏・律子・蓮見、三人ともどこか欠落したところがある人間で、共感できる、まっすぐに応援できる、という王道キャラクターではないかもしれません。ただ、そんな欠けた部分こそが彼らの魅力であり、どこか似た者同士の弱さを共有する3人だからこそ、近づくほど傷つけあうと分かっていても惹かれ合ってしまう最終章になっていると思います。狂気か純愛か、彼らの歪な関係性が行き着く先を最後まで見届けていただけたらと思います。