「極悪女王」ゆりやんレトリィバァが熱演するダンプ松本とは?
全国民に嫌われても続けたプロレス
当時、ダンプの嫌われぶりは凄まじく、今もなお語り継がれる数々の伝説を残している。どこから開封してもケガをするよう、入念な仕込みが施されたカミソリ入りの手紙、ゴキブリが入ったケーキなど、嫌がらせのプレゼントは日常茶飯事。ある日の試合帰りには、興奮したファンおよそ600人が「極悪同盟」メンバーの乗る移動用大型バスを取り囲み、命の危機にも直面したというエピソードも残されている。
そんな逸話が次から次へと出てくるダンプ松本も、もともとは女子プロレスの大ファン。輝くようなレスラーになりたいと憧れを抱く、普通の少女「松本香」だった。決して裕福ではない家庭に育ち、家族のために働きに出るはずだった予定を押し切って参加したオーディションで長与、飛鳥と出会い、同期の練習生として共に厳しい練習に励んでいく。しかし当時の彼女はなかなか芽が出ず、同期の中でも一番の落ちこぼれであった。
プロレスラーへの夢を諦めず、ひたむきに努力し続ける一人の少女「松本香」と、日本最恐のヒールとして全国民を敵に回し女子プロレス熱狂の時代へと導いた「ダンプ松本」。まるで一人二役のような振れ幅のあるキャラクターを見事に演じ切ったゆりやんは、「自分から湧き出てくる悔しさとか腹立たしさ、悲しさ、ジェラシーみたいなものを全部遠慮なく出すっていうことが大事だなと思っていました」と撮影を振り返り、「私、意外と芸人として感情を露わにしたことがなくて。初めて本気でなりふり構わずぶつかるということをやって、自分の中の殻が割れた気がしました」と新境地を明かしている。(清水一)