なぜ“風間ダービー“は白熱の名勝負になったのか?中村憲剛「これがファンの求めているサッカー」
あれから8ヵ月。10年ぶりとなる5連勝をマークし、史上2チーム目の3連覇へ向けて調子をあげてきたフロンターレに対して、グランパスもボールを保持するだけでなく、失えばすぐに奪い返しにくる切れ味鋭い、攻撃的な守備をも身につけていた。 しかも、最前線のジョー(32)と長谷川アーリアジャスール(30)がプレスの「一の矢」を担い続け、連動するように2列目の選手たちも続く。今シーズンから加入したボランチ、ジョアン・シミッチ(25)と元日本代表の米本拓司(28)が攻守両面で存在感を放ち、最終ラインも高い位置を取り続ける。 必然的に最前線から最終ラインまでの距離が30メートルほどで推移。そのなかへフロンターレのフィールドプレーヤーを飲み込みながら、限られたスペースのなかで些細なミスがピンチを招き、あるいはチャンスを生み出すスピーディーなサッカーが展開される。 「一手先だけを考えていたらパスがつながらないというか、相手に引っかかっちゃうようなコンパクトさのなかでやれていた。ボールの置き所ひとつ、前に置くのか、横に置くのかでも状況が変わるくらいだったので、自分たちの頭のなかの速さをもっとあげなくちゃいけなかった。裏をかき合うのが非常に楽しかったし、こういうゲームのなかで選手は成長していくんじゃないかと感じました」 グランパスの変貌ぶりを認めたうえで、試合後の中村は思わず言葉を弾ませている。瞬時に数手先までを読みながら、トラップの質やパスコースやボールの強弱、あるいは細かいポジショニングまでにこだわらなければ相手ゴール前まで迫れない。シュート数がフロンターレ8、グランパス7にとどまったのも、両チームが攻防一体のサッカーを繰り広げ続けたからに他ならない。 「僕は過去のことは忘れているので、(昨年9月の試合と)比べる気もありません」 ドローで6戦連続無敗(3勝3分け)とし、暫定2位をキープした試合後の公式会見。前だけを見つめていると強調した風間監督は、それでもチームに生じている変化をポジティブに受け止めた。 「ここまで12試合を戦いながら、自分たちが思ったように試合を進められるようになっている。同時に足りない部分が明確に課題として残る、ということを毎試合積み重ねられている。今日もそのなかのひとつの試合としては、選手にプラスになるゲームだったのではないか」