山岳遭難救助に備え、桜川消防署に整備された訓練施設=桜川市鍬田

茨城県内の低山が登山初心者の人気を集める中、山岳遭難に備えた訓練施設が桜川消防署(同県桜川市鍬田)に完成した。山の斜面を模した壁が特徴で、実践的な訓練を通して円滑な救助活動につなげるのが狙い。筑西広域市町村圏事務組合消防本部によると、県内の消防署で同種施設を整備するのは初めて。 山岳訓練施設「山岳用訓練棟」は7月、同消防署の一角に完成。山の斜面のような「傾斜壁」(高さ7メートル、幅6メートル、斜度45度)が特徴で、ごつごつとした山肌を再現している。 同署所属の16人で構成する特別救助隊を中心に活用し、ハーネスやロープ、カラビナなどの資機材の取り扱いに加え、滑落した遭難者を見つけて救助するまでの流れなどを習得できる。ロープで降下したり、担架にけが人を固定して搬送したりする実践的な訓練が可能だ。 同署の山岳救助訓練はこれまで、近隣の公園などで実施してきたが、同署敷地内に訓練施設を構えたことで、実際の救助活動で連携が欠かせない消防隊の訓練が容易になる。上野貴史副署長(57)は「施設で救助活動の基礎を固め、現場では地面の緩さや強風など施設との違いを学んでほしい」と設置の狙いを語った。 市内には日本百名山の筑波山をはじめ、雨巻山や足尾山、御嶽山などの低山がそろっており、特別救助隊の潮田新治隊長(46)は「初心者が入山しやすい低山の登山が人気」と語る。 人気の半面、遭難リスクも高まっており、同署管内では年間1～4件の山岳救助に伴う救急搬送が発生。近年は道迷いや滑落、オフロードバイクの転倒事故も相次いでいるという。昨年5月には登山中の男性(55)から「胸が痛い」と119番通報があり、救急搬送して一命を取り留めたケースもあった。 秋の行楽シーズンが近づく中、上野副署長は、低山の登山について「1人ではなく、複数の『バディ(仲間)』を組んで会話を楽しみながら登ってほしい。むちゃはしないことが大事」と安全登山を呼びかけた。