早くも夏休み映画の主役交代? 『怪盗グルーのミニオン超変身』が底力を発揮
7月第3週の動員ランキングは、『キングダム 大将軍の帰還』が週末3日間で動員52万9000人、興収8億1600万円をあげて2週連続で1位となった。公開から10日間の動員は241万1600人、興収は36億1500万円。もちろんそれが見事な成績であることには異論はないのだが、前回の本連載で疑義を唱えた、公開から数日後の「興収100億円も視野」「興収100億円超えへ」報道の答え合わせをしておきたい。公開2週目の週末の動員と興収は、いずれも初週のちょうど半分。日本で興収100億円を超えた作品はこれまで1本の例外もなく、公開2週目以降に公開初週の成績を超えるか、ほぼ同水準の数字を記録している。2作目、3作目の興行からも予測できたように、シリーズ4作目の『キングダム 大将軍の帰還』の興行は、人気シリーズ作品にありがちな完全な「初動型」であった。メディアで興行の記事を書いている人間が、初週の段階でそれが予測できないのならば能力が低すぎるし、予測できながらも「興収100億円も視野」「興収100億円超えへ」などと書いたのだとしたらモラルが低すぎる。 【写真】2週連続1位となった『キングダム 大将軍の帰還』 初登場2位となったのはイルミネーション・スタジオの人気シリーズ最新作『怪盗グルーのミニオン超変身』。オープニング3日間の動員は51万人、興収は6億8100万円。『怪盗グルー』シリーズの特異なところは、メインの『怪盗グルー』シリーズ(今回の『怪盗グルーのミニオン超変身』が4作目)とスピンオフの『ミニオンズ』シリーズ(これまで2作品。2027年夏に3作目が公開予定)の興行価値が拮抗しているところ。その傾向は世界的にも共通していて、『怪盗グルー』シリーズの前作『怪盗グルーのミニオン大脱走』(2017年)は全世界興収が約10億3500万ドル、『ミニオンズ』シリーズの最新作『ミニオンズ フィーバー』(2022年)は全世界興収が約9億4000万ドルと、10億ドル前後という非常に高い水準でほぼ互角の記録を残している。 今作『怪盗グルーのミニオン超変身』の日本でのオープニング成績は、『怪盗グルーのミニオン大脱走』との興収比で91%、『ミニオンズ フィーバー』との興収比でほぼ横並びという数字。倍々ゲームで興収を伸ばしてきた2010年代後半までの勢いは一旦落ち着いたものの、ミニオンズの面々は人気テーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの「顔」としても幅広い層への浸透を果たし、すっかり人気定着期に入っていると言えるだろう。 ちょうど子供たちの夏休み突入と重なった今週のウィークデイは『キングダム 大将軍の帰還』を大きくリードし、イレギュラーな水曜日公開となった『デッドプール&ウルヴァリン』に対しても動員では上回っている『怪盗グルーのミニオン超変身』。おそらく興収の上限は前作『怪盗グルーのミニオン大脱走』の73.1億円あたりとなることが予測され、「夏休み映画の本命」と呼べるほどの爆発力には欠けるものの、累計興収でも『キングダム 大将軍の帰還』といい勝負を繰り広げることになるのではないか? いずれにせよ、デイリー成績の主役は『キングダム 大将軍の帰還』でもなく、『デッドプール&ウルヴァリン』でもなく、当面は『怪盗グルーのミニオン超変身』ということになるだろう。
宇野維正