「歴代大統領は名前を残したがる」再建工事の関係者からひんしゅく…ノートルダム大聖堂に透けるフランス・マクロン大統領の“思惑”
尖塔は元通り復元…マクロン大統領の次の狙いは「ステンドグラス」
これで大聖堂をめぐる火災の話は一段落……とはなっていない。実はノートルダム大聖堂を巡ってもう一つの“再建計画”が進行していることをご存じだろうか。焦点となっているのは大聖堂内部に設置された6枚のステンドグラスだ。 2023年12月、マクロン大統領は大聖堂を訪れた際、ステンドグラスを現代的なものに置き換える計画を発表した。ステンドグラスは19世紀半ばに制作され、ノートルダム大聖堂の身廊(しんろう)の南壁に沿って並ぶ礼拝堂を照らすために作られたもので、火災の中にあっても傷つくことはなかった。 前述の尖塔の工事について助言をした文化財の保全に関する国の委員会は、この計画についても意見をまとめている。報告書は一般には公表されていないが、地元メディアによると、歴史的建造物の保全や修復について定めたベネチア憲章を引き合いに出して論理を展開。大聖堂が世界遺産に登録されていることを念頭に、「文化遺産などとして登録されているものを破壊し、現代的なものに置き換えることは推奨しない」などとして“ステンドグラス近代化”の計画を全会一致で否決したというのだ。
「ノートルダムに21世紀の刻印を押そうとしている」署名サイトに批判の声
インターネット上の署名サイトでは“ステンドグラス近代化”に反対するページが立ち上がり、12月16日時点で24万を超える反対の署名が集まっている。署名を呼びかける言葉は「災害を生き延びたステンドグラスをすぐに取り外すことをどう正当化できるのか。マクロン氏は、ノートルダム大聖堂に“21世紀の刻印”を押そうとしている」と辛らつだ。 反対の声が上がる中であっても、計画は着々と前に進んでいる。2024年9月、ステンドグラス設置のプロジェクトは8人のアーティストを選出、12月にはその中から大統領とパリ大司教も賛成し、アーティストのクレール・タブレ氏が計画を担うことを決めた。フランス大統領府の発表によると、2025年春には改めて文化財の保全に関する国の委員会にも意見を求めるとしているものの、新ステンドグラスは2026年末までに設置される予定になっている。 街で話を聞くと、新たなステンドグラスに対し「モダンなものを取り入れるのは悪いことではない」と賛成する人から強硬に反対の意見を論じる人まで多種多様だった。大聖堂の再建工事に関わった職人の一人は、「最初からひんしゅくだった。ミッテラン元大統領がルーブル美術館のピラミッドを主導したように、歴代の大統領は何かと“自分の印”を残したがる。尖塔のコンペの話を聞いたときに、マクロン大統領にとってはノートルダム大聖堂が“それ”に当たるんだなと思った。尖塔でできなかったことをステンドグラスでやろうとしているのではないか」と話していた。