ツアー選手の年間評価に“賞金ランク”は適正か? 大会毎の賞金格差を前に無理がある(羽川豊)
【羽川豊の視点 Weekly Watch】 米女子ツアーの古江彩佳が、平均ストローク69.99で日本人初の「ベアトロフィー」(最少平均ストローク賞)を獲得しました。長年同ツアーを見てきましたが、日本人選手もここまできたかと、感慨深いものがあります。 【写真】試合ガタ減り、選手クーデター未遂…“不毛の8年”で晩節汚した青木功JGTO前会長 「ベアトロフィー」は、ショットの技術にたけていることはもちろんですが、同ツアーは世界を転戦するので芝質の違うグリーンへの対応力がスコアを左右します。長距離移動は体力や気力、調整力も必要ですから、心技体の「総合力」なしに手にすることはできません。今年の古江は米国本格参戦3年目。海外メジャーのエビアン選手権にも優勝し、成長が著しい。来季の活躍も楽しみです。 「総合力」という面では、ポイント(P)レースでも9位に入り、狙っていたという「新人王」になった西郷真央も素晴らしいタイトルを取りました。他方、勝てる試合を何度も落とした悔しさもあるでしょう。オフはその課題に取り組むはずです。 米女子ツアーの最終戦は、日本円にして6億円を超える優勝賞金が話題になりました。日米の女子ツアーや欧米男子ツアーのシード権は獲得Pで決まるため、シーズン中は「賞金レース」が注目されることはありません。 一方で、国内男子ツアーのシード権は今も獲得賞金額が基準です。前週の試合で来季のシード選手が確定しました。28日開幕の今季最終戦、日本シリーズには有資格者30人が出場。優勝賞金は4000万円と高額ですから、今季4勝で現在賞金ランク1位の平田憲聖(約1億1244万円)を、同1勝で5位の木下稜介(約8837万円)が逆転することも可能です。 2年前に賞金王になった比嘉一貴は当時、世界ランク68位でもマスターズに特別招待されました。日本の賞金王に必ず招待状が届くわけではありませんが、誰でもトップを極めたいのは当然でしょう。 「賞金額ではなく、獲得Pこそが、実力を正当に評価できる」という声が多いのは、大会ごとに賞金総額が異なるからです。男子ツアーは日本オープンから最終戦までの優勝賞金は4000万円以上ですが、その半分の大会も少なくない。「賞金格差」がある以上、1年の活躍を獲得賞金で評価するということにはやはり無理があります。 国内女子ツアーもかつては賞金ランク1位が「年間女王」となり、シード権も同ランクにより決まっていました。今は「年間女王」もシード権も「メルセデスポイントランキング」が物差しです。3日間大会の優勝は200P、4日間大会300P、国内公式大会400P、海外メジャー800Pと配分を分けて、大会の「格」や出場者レベルのバランスを取っています。国内の男子ツアーも世界の流れには逆らえず、近いうちにポイント制に移行していくとみています。 (羽川豊/プロゴルファー)