マスコミが鵜呑みにし続けている財務省の「ヤバい言い分」…「財政が厳しい」は相変わらず大ウソだ
相変わらずミスリーディング
財務省は、相変わらずミスリーディングな資料を発表し続けている。それをマスコミは、それをそのまま鵜呑みにしたまま報じている。 【写真】衆院補選のウラで審議が進んでいた実質「移民法」のヤバすぎる中身 もともと財務省の公表元データは、「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」といい財務省のサイトにある。これを見ればわかるが、四半期ごとに公表されている。これについての報道も、テンプレートかのように、「過去最大を更新し、財政状況は一段と厳しくなっている」。 債務残高が大きくなると財政状況が厳しいというなら、金融機関の預金残高の大きなところも財政状況が厳しいと言わなければならない。ベスト5をいえば、ゆうちょ銀行195.0兆円、三菱UFJ銀行192.3兆円、三井住友銀行149.9兆円、みずほ銀行145.2兆円、JAバンク108.6兆円だが、財政状況が厳しいなんて話はまったくない。 それもそのはず、債務が大きいことは財政状況に直結せず、バランスシートで資産との大小でみなければいけないからだ。 その答え合わせは後でするとして、このほかにも、財務省は相変わらず誤解を招くような資料を出している。 4月9日、財政制度等審議会財政制度分科会で出したのが次の資料だ。 この資料を使って、「拡大する財政出動の結果、過去20 年で政府債務残高は約 2倍となったが、名目 GDP はほぼ横ばい。 積極的な財政運営が持続的な成長にはつながっていない面 もある。先進国の債務残高(対GDP 比)と実質経済成長率の関係性を見ると、 必ずしも正の相関関係は見られない。」と説明している。
財務省への疑問
この図は、財政学者であればおかしいと思う資料だ。実は、2010年頃、ハーバード大学の経済学者であるカーメン・ラインハート氏とケネス・ロゴフ氏が似たような資料を発表し話題になった。 両氏は、共著「国家は破綻する─金融危機の800年」(原題はThis Time Is Different)で世界的に著名な人物である。 両氏の論文は、いろいろな国のデータを分析し国家債務残高の対GDP比率が少なくとも90%に達すれば、GDP伸び率が減速し始めると主張していた。その研究は、公的債務へ取り組みを正当化するため、日本、米国や欧州連合などの当局者がしばしば言及していた。 しかし、ラインハート氏とロゴフ氏の論文データには、データ処理上のミスがあった。結果として、債務残高とGDP成長率の関係を主張するのは、下火になった。 今回、財務省が再びかつてのラインハート氏とロゴフ氏の論文にあった図と似たようなものを出してきたので、驚いた次第だ。 実は、筆者も、2010年当時ラインハート・ロゴフ論文を再現しようとして難渋し怪しいと思っていた。その顛末は、今から10年以上前の本コラムの2013年4月22日付け「財政再建から「成長」に軸を移したG20とラインハート・ロゴフ論文の誤りについて」で書いた。要するに、日本とイタリアのデータを除くと、確たる結論が出ないのだ。 実は当時、別のアイディアもあった。本コラム読者あればご存じだろうが、国家債務残高ではなく、国の広い意味での統合政府でのネット債務残高でみたらどうなるか、という観点だ。その当時が先進国であっても、統合政府ベースのバランスシートデータを入手するのは困難であったので、実行できなかった。 しかし現在であれば、IMFのデータがそろっている。2018年10月15日付け「IMFが公表した日本の財政「衝撃レポート」の中身を分析する」で紹介した、IMFのPublic Sector Balance Sheet (PSBS) だ。 それを使って、財務省データに反論してみよう。
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