「ASEANで日本はEV出遅れ」はウソ 中国勢を待つ「現地生産」という義務
中国製BEV、逆風が吹き始めた?
新車購入層は全世帯数の15%程度と言われる。高価な新車を買うことは一家にとって大イベントだ。初回車検の有効期間が7年間なので、7年目に下取りに出すオーナーは多く、7年落ちの中古車が一定の市場を形成している。ここまでトラブルなく乗れることが重要だ。しかし、中国製BEVのトラブルがSNSで拡散され、2024年に入ってBEVの売れ行きに影響を与えた。 タイでは短時間に道路が冠水するほどのスコールがよくある。こうした道路で中国製BEVの床下電池パックに水が入り故障した例があった。保証期間中なら無償修理で対応してもらえるはずだが「クレーム処理がスムーズにいかなかった」という例もある。 タイでBEVを買った人は、それまでは高級ピックアップトラックを購入していた裕福な人たちが多い。日系ブランドのピックアップは極めて信頼性が高いから、そう簡単には壊れない。壊れてもアフターフォロー体制はしっかりしている。しかし中国製BEVはそうではなかった。販売店でも「直し方を知らない」ことがあった。 走行距離の長さもタイ市場の特徴だ。日本では乗用車ユーザーの年間平均走行距離は6500km程度といわれるが、三菱自動車に訊くと「三菱車は年に4万km乗るオーナーも少なくない」という。市場調査のデータでも3万km以上だ。前述のようにタイの車検は新車購入から7年後だ。7年乗れば走行距離は20~25万kmになる。この間、果たしてBEV電池がトラブルなく「持つ」かがBEVへの関心事だ。 タイでBEVの車載電池を7年間保証してくれるOEMはない。走行距離20万km以上という保証も聞いたことがない。その一方で「保証の切れた電池を交換したら2万ドル」のような話はよく耳にする。タイに限らず、新しいモノを最初に購入する層、いわゆるアーリーアダプターがBEVを真っ先に買ったのだが、今年3月のタイ国内メーカー別販売台数は上位からトヨタ、ホンダ、三菱自動車、MG(中国・上海汽車)、スズキ、BYD(比亜迪汽車)の順だった。 1~3月の累計では上位がトヨタ、ホンダ、BYD、三菱自動車、MG、スズキの順。7位に哪吒汽車、10位に長城汽車が入ったものの、中国製BEVは昨年春以降の勢いが衰えた。