世界の壮大なドラゴン伝説6選、最古、最大、最強の竜は? 日本からもエントリー!
黒竜アンカラゴン――史上最大級の竜
J・R・R・トールキンの小説『ホビットの冒険』に、スマウグという悪役の竜が登場する。中つ国最後の巨大竜のうちの1頭で、体長はおよそ18メートルだろうと、ファンたちは推測している。ところが、ピーター・ジャクソン監督の映画版に登場するスマウグは、それよりもはるかに大きく、130メートルもあった。 しかしそれさえも、同じくトールキン作『シルマリルの物語』の黒竜アンカラゴンとは比べ物にならない。アンカラゴンは中つ国に存在した最大かつ最強の竜で、解釈によっては体長が24キロもあった可能性がある。それが倒れた時には、3つの火山が崩壊したという。 アンカラゴンはさらに、火を吐くことで恐れられた。この、火を吐く竜というのもお決まりのパターンだが、その起源はアレクサンドロス大王にあると、ネビンス氏は言う。アレクサンドロスがアリストテレスに宛てた手紙の中には、「燃える松明のような」息を吐く巨大なヘビについての言及がある。
竜神――日本の海の神
日本神話に登場する竜神は、嵐や海のあらゆる生物を支配する力強い海の神だ。竜神の影響は、様々な架空の人物や設定にまで及んでいる。海のなかにある竜宮城は、アニメ『ワンピース』のおかげで海外にも広く知られるようになった。 また、『日本書紀』に初代天皇として記されている神武天皇は、竜神の子孫だった。神武天皇の父方の祖母は竜宮の竜神で、母親はその妹だ。
チージャンロン――竜に最もよく似た恐竜
恐竜の化石も、特に中国で竜伝説の発展に影響を与えた可能性がある。中国には、極端に長い首を持つことで知られるマメンキサウルス類の恐竜の化石が豊富に眠っている。 中でも特に竜を思わせる外見をした恐竜が、2006年に綦江(きこう)で発見されたチージャンロン(綦江龍)だ。体長は15メートルで、体の大部分で巨大な頭部を支えていた。椎骨の内部は空気で満たされていたおかげで、首は比較的軽量だった。 長い首を持った恐竜の頭部は死んだあと外れやすい構造になっているため、首と一緒に発見されることは珍しいと、チージャンロンを新種記載した宮下哲人氏は言う。宮下氏がカナダ、アルバータ大学の博士課程在籍中に執筆に加わったこの論文は、2015年に学術誌「Journal of Vertebrate Paleontology」に発表された。 古代中国の人々も、巨大な骨を発見して、アジア神話の竜に特徴的な、体が長く、ヘビのような生き物を想像したのではないだろうか。
アペプ――神話史上最強クラス
「竜は、神と関連付けられることの方が多いです」と、ネビンス氏は言う。その原型ともいうべき古代エジプトのアペプ神は、神話史上最強クラスの竜かもしれない。 この世の初めから存在する巨大なヘビで、古代の竜、そして悪魔の原型を表す「混沌の支配者」だ。太陽神ラーを相手に永遠の戦いを挑み、世界を永続的な闇に陥れようとしている。 何度も倒されているにもかかわらず、しつこく復活してきては、邪悪な支配を維持し、光の源である太陽そのものを消滅させようとして、地震や雷雨を引き起こす。
文=Cezary Strusiewicz/訳=荒井ハンナ