クラシックカーのような美しきサイドカー!その「中身」はロイヤルエンフィールド・スーパーメテオ650だった
スタンダードフレームのデザインをいかしている
車両製作のスタートは、まず車高を決め、各パーツのバランスを考えました。 外装を外してフレームとエンジンだけの状態にして、それをジャッキで上げたり下げたりしながら、そのバランスを考えていきました。 スイングアームが水平になるくらいまでエンジンとフレームを下げていったとき、スタンダードフレームの美しいラインに気が付いた。そこでスタンダードフレームのラインを活かしてボディラインを再構築していこうと決めました。それに気付くまでは、フレームはゼロから造ろうと思っていたんです。 ──では、スタンダードのフレームに手を加えた部分というと、どのあたりなのでしょうか? ステアリングネックチューブはスタンダードのままです。 ただ、スタンダードフレームはステアリングヘッド周りの強度を高めるためネックチューブとメインフレーム、ダウンチューブが繋がる部分に強固なガセットプレートがあるのですが、そのプレートを取り外し新たに補強パイプをトラス状に取り付けました。 メインチューブは新たに製作しました。リヤにワイドホイールを装着するため、エンジンを車体左側に5mmオフセットする必要があったんです。具体的に言うと、エンジンを左に移動させたというより、造り変えたネックチューブとメインフレームを右側にオフセットした、という表現が正しいです。 スイングアームピボット部分やフレーム下側はスタンダードフレームを流用していますが、メインチューブを新たに製作したことで、リヤサスペンションを支えるループフレームの一部は作り直しました。 このループフレームと、新たに製作したメインフレーム、そしてスチール製の燃料タンク、アルミ製のシートカウル、そして大きく前に伸びたヘッドライトナセルのラインが車体側の見所にもなっています。
カーのフレーム、ボディもオリジナル製作
──製作は初めてとのことでしたが、サイドカーならではの難しさはあったのでしょうか? アールズフォーク……これは、旋回時にフロントフォークにサイドフォースが強くかかるサイドカーのために英国のアールズ氏により設計された構造です。BMWのサイドカーも純正採用していましたが、ハーレーダビッドソンなどのカスタム・サイドカーでもアールズフォークを装着する例もありました。 ただしエンジンや車体が大きいハーレーダビッドソンなどでサイドカーを製作するときには、強度を高めるために、フォークを構成するパイプ外径を太くするのでフォークそのものが大きくなりがちです。 大きな車体をベースにしたサイドカー・カスタムだったらそれでも良いでしょうが、このスーパーメテオ650はコンパクトな車体が特徴。その車体構成を活かした設計にしたかったので、今回のプロジェクト用にオリジナルのアールズフォークを製作しました。ハーレーダビッドソン用などに比べると、かなりナローな仕上がりになっています。 また、アールズフォークそのものを小さく細く作るだけではなく、メインフレームやタイヤなど各部とのクリアランスも最小限になるように設計しています。作業を進めていく過程で新しい発見もあり、その都度ディテールを変更したりパーツを作り直したりもしました。 たとえば車高を下げてスイングアームの角度が地面と平行となったとき、アールズフォークのアームも水平になって、それをボディラインの基準に車体デザインを再構築した。またアールズフォークの製作過程で、フレームのダウンチューブの角度とアールズフォークのレッグチューブの角度をシンクロさせるアイディアを思いつき、結果的にアールズフォークのパイプは3回作り直しています。 アールズフォークに装着したサスペンションは古いKONI製ですが、そのままではスプリングの外径が太く、ヘッドライトナセルなど他パーツとのバランスが悪かった。そこで直径が小さなスプリングを造ったんですが、それによってスプリングのバネレートも上げることができました。 サイドカーフレームの製作はバイク側とのバランスを決めるのが難しい。少し幅が広いだけでカッコ悪くなってしまうので。バイクとサイドカー、合わせて3つあるホイールの位置関係もとても重要でした。最初に造ったサイドカー用フレームは大きすぎたので、10cm以上幅を詰めて作り直しました。できるだけコンパクトなサイドカーにしたかったんです。