MスペックのMはミドルハースト? スカイラインGT-Rで成功した男(2) レザーシートはロールス・ロイス製
辛口のジェレミー・クラークソンも絶賛
モータースポーツでの活躍と同時に、グレートブリテン島の一般道にも、R32型日産スカイラインGT-Rは増えていった。「ジャンスピード・レーシングが当初は輸入していたのですが、途中で停止し、自分たちの方へ依頼が集まるようになりました」 【写真】辛口のクラークソンも絶賛 日産スカイライン GT-R R35型イタルデザインと初代も (109枚) 「注文主は各地に散らばっていたので、レースで遠征する度に、納車するGT-Rも運んでいたんです。スカイラインで、ビジネスが成り立つようになっていきました」。ミドルハースト日産を営む、アンディ・ミドルハースト氏が振り返る。 GT-Rに魅せられた彼は、公道用として、真っ白なR32型を所有している。マニアから譲り受けた珍しいVスペックとのことで、BBSのアルミホイールにブレンボのブレーキが組まれている。 日産ヨーロッパは話題を集めるため、1995年に次期R33型のGT-Rを輸入。BBCトップギアという人気番組のキャスター、ジェレミー・クラークソン氏へ貸し出した。 「辛口のクラークソンも、絶賛でした。その頃既に、自分は20台ほど輸入していたので、英国の正規ディーラーにならないかと日産から連絡をもらったんです。英国の規定では、単一車両承認制度という枠組みなら、最大100台まで輸入可能なんですね」 「最終的に1997年から1998年にかけて、R33型GT-Rを100台販売しました。そのすべての整備も引き受けています」
Mスペックはミドルハースト日産のM?
正式な輸入前に、アンディは英国の自動車試験場、ミルブルックで公式テストを実施。日本仕様に設定される速度リミッターを解除し、180km/h以上で連続走行させた状態を確かめた。 「温度計を各部にセットし、日産の社員を助手席に乗せて、オーバルコースを全開で20分走行。最高速度は時速160マイル(257km/h)まで出ました。しかし、ワイパーは動かず、エアコンはストップ。ルーフは、空気の摩擦で温度が上昇していました」 アンダーステアは、R32型と変わらなかった。「バンクコーナーで、外側の壁から1mくらいのところを走り続けました。15分後に、日産の社員が止めるよう命じましたが、わたしは無視しました。死ぬ危険は確かにありましたが、残り5分だけでしたから」 「走行後、日産の技術者がデータを確認し、こんな状態で運転していたなんて馬鹿げている!と叫んでいましたよ」。これを受け、英国仕様のR33型の生産が決まった。車両識別番号(VIN)も、日本仕様とは異なるものが割り当てられた。 エンジンオイルに加えて、デフとトランスファーのフルードにも専用のクーラーを装備。内装には、オプションでコノリーレザーが設定された。 アンディが続ける。「レザーシートは、ロールス・ロイスへ持ち込んで仕立ててもらっていました。次のR34型では、レザーシートが標準に。日本仕様のMスペックも、コノリーレザー張りでしたね」 「Mは、日産の技術者だった水野さんのイニシャルだといわれています。でも、ミドルハースト日産のMかも知れませんよ」。と彼が笑う。