番記者のちょっといい話 ヤクルト・奥川恭伸、被災した故郷思い「今度は僕が元気を届けたい」有言実行の79球
(日本生命セ・パ交流戦、オリックス3-5ヤクルト、1回戦、ヤクルト1勝、14日、京セラ)ヤクルト・奥川恭伸投手(23)が14日、980日ぶりの白星をつかんだ。サンケイスポーツの歴代担当記者が復活の舞台裏を振り返った。 【写真】地震で崩壊した住宅の車庫…ヤクルト・奥川恭伸、帰省中に石川・かほく市で被災 「暗闇」と表現するほど長く苦しいリハビリ生活の中、故郷である石川から届く声が奥川の光になっていた。 2022年8月。スポンサー契約を結ぶ大同工業(本社・石川県加賀市)から、地元ファンが記した寄せ書きが贈られた。「調子がいいときだけでなく、苦しんでいるときこそ、われわれが応援したい」という同社の思いから実現した企画。金沢、加賀市内のショッピングモールにパネルが設置され、100人以上が「石川の星」「絶対大丈夫」などと記入した。星稜高時代の19年夏に甲子園大会準優勝に導いた地元のヒーローは「応援してくれる人がいる。また頑張ろうという気持ちになれた」と支えにした。 今年の元日。石川県などで能登半島地震が発生した。かほく市出身の奥川も帰省中に被災。津波警報が鳴り、建物を飛び出し、近くの高台まで逃げた。「(食事が)のどを通らなかった」と体重は4キロほど減少。帰京後も地震への不安から真っ暗では眠れなくなった。いまも被災地には避難所で生活を送る人がいる中、地元を気遣い「今度は僕が元気を届けたい」。今季にかける思いは人一倍強かった。 今年7月に公開予定のポスターにも、被災者に寄り添う右腕の思いが反映されている。奥川自ら「自分が活躍するシーンを地元の方に見ていただいて、元気を出してもらいたい」とイメージを提案した。復帰戦で投じた79球には、故郷への思いもこもっていた。(ヤクルト担当・武田千怜)