「人への投資」で注目のリスキリング、取り組んでいる企業は 8.9%にとどまる 課題は「モチベーションの維持」
人手不足を抱える企業ほどリスキリングに取り組む傾向、一方で人手不足が原因で取り組めないとの声も
リスキリングは労働生産性を高める効果が期待できることから、人手不足を解消させる一手となり得る。そこで、当調査で同時に尋ねている従業員の過不足感別に取組状況を見ると、人手不足(従業員が「不足」と回答)を感じている企業では、リスキリングに取り組んでいる割合は10.0%だった。従業員が「適正」「過剰」と感じている企業より高い結果となったが、大きな差はみられなかった。 その背景として、「限られた人数で仕事をしているため、様々な研修を受けさせる時間がない。それよりも日々の指導や会議の場での指導に重点を置いている」(木材・竹材卸売、京都府)や「やりたいことは山ほどあるが、人材不足が足を引っ張っている」(一般貨物自動車運送、埼玉県)など、リスキリングに注力する人材や時間を捻出することが難しく、取り組みたいと考えながらも着手することができない状況があると考えられる。
リスキリングの取り組み内容、オンラインツールの活用や経営層が自らアクションを起こす割合が高い
リスキリングに「積極的」(取り組んでいる/取り組みたいと思う)な企業に対して、その内容を尋ねたところ、新たな人材の発掘につながる「従業員のスキルの把握、可視化」が52.1%で最も高かった。ほとんどの項目でリスキリングに「取り組んでいる」企業の方が高い割合を示したものの、当項目では「取り組みたいと思う」企業の方が高い(48.3%→54.0%)。まずは従業員の状況を把握したうえで「従業員の技術習得ために講習の受講や資格取得を促している」(電気機械器具修理、千葉県)のような進め方をしているようだ。 次いで「eラーニング、オンライン学習サービスなどの活用」(47.5%)が上位となり、オンラインツールの活用は半数近くにのぼった。他方、政府が積極的に講じている「給付金・助成金などの申請・受給」は17.5%と低位だった。「助成金をもっと使いやすいものにしてほしい」(不動産管理、大阪府)などの意見もあった。
リスキリングに対する課題は時間・人材の確保 取り組むなかでは「モチベーションの維持」が上位に
リスキリングに取り組む上での課題について尋ねたところ、「対応する時間が確保できない」(42.1%)、「対応できる人材がいない」(38.9%)が特に高かった。 また、「取り組んでいない」企業と「取り組んでいる」企業それぞれにおける課題を分析すると、「取り組んでいない」企業においては時間・人材・ノウハウ・費用などのリソース不足が大きな課題となっていた。他方、「取り組んでいる」企業においては従業員のモチベーション維持に課題がある企業が多く見られた。企業からは、「明確な目的と達成目標がないまま行ってもモチベーションは下がるだけで、成果は望めない」(無床診療所、千葉県)といった声が多数あがっている。 加えて、従業員の属性によってモチベーションが左右されてしまうといった意見もあった。企業からは、「将来の生産性向上に繋がるが、高齢化する技術者へのモチベーションの維持が難しい」(土木建築サービス、愛知県)や「派遣人材はスキルやルールを教えても契約終了という現状があり、教える側のモチベーションにも支障がある」(旅館、群馬県)のような意見が聞かれた。