与党に極大な貸しを作り、野党にも賛同できる…国民民主党「自公連立入り拒否」の打ち手がなぜうまいと言えるか?
■ 「政治とカネ」問題を前面に打ち出さず 劣勢明らかな与党にとって国民民主党はどのような存在か。 この総選挙の国民民主党の政策のキャッチコピーはそのものずばり「手取りを増やす。」「手取りを増やし、インフレに勝つ。」だった(国民民主党「第50回 衆議院議員総選挙 特設サイト」)。 国民民主党は「給料・年金が上がる経済を実現」「自分の国は自分で守る」「人づくりこそ、国づくり」「正直な政治をつらぬく」という4つの主張を打ち出した。 少々興味深いのは、事前の各社世論調査などでも関心が高かった政治とカネ問題を前面に打ち出していないことである。 実際、投開票が開けてから、榛葉幹事長などが「政治とカネばかりが日本社会の問題ではない」という趣旨の発言を行っているが、独自のポジションを取ってきたことがピタリとハマっているともいえる。 しかし、なかでも国民民主党の事実上の政策の柱となっているのは、これまで長く主張してきた基礎控除引き上げとガソリン税のトリガー条項凍結解除など、現役世代重視で幅広く有権者に訴求しそうな2本といってよいだろう。
■ 国民民主党の政策2本柱の内容は? よく聞くこの2つの政策について、簡単に説明することにしたい。 前者はわかりやすい。所得税の基礎控除(厳密には基礎控除48万円と給与所得控除55万円の合算額)を103万円から178万円に拡大するというものだ。 控除額の拡大は、課税所得の対象から引ける金額の増大になることから、幅広い生活者にとってメリットがある。基礎控除が導入されたのは1947年のことだが、現在の103万円まで拡大されてきた。 その一方で、物価や最低賃金が上昇しているにもかかわらず、控除が据え置かれていることを国民民主党は問題視したのである。 後者はどうか。ガソリンは二重三重に課税されている少し珍しい財だ。 そのなかでも3か月以上リッター160円を超えるような場合において、揮発油税の上乗せ分に相当する特例税率リッター53.8円のうち上乗せ分25.1円を免除し、本来の税率(本則税率)リッター28.7円を適用する租税特別措置法第89条で定められる仕組みを一般に「トリガー条項」と呼んでいる(なお平均小売価格が3か月以上リッター130円超の場合には上乗せを再開する)。 このトリガー条項だが、東日本大震災の復興財源を調達するにあたって「一時的に」、しかし現実には東日本大震災から10年以上の歳月が流れた現在に至るまで、相当の長期間にわたって凍結している(「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律」)。 (揮発油価格高騰時における揮発油税及び地方揮発油税の税率の特例規定の適用停止措置の停止) 第四十四条 租税特別措置法第八十九条の規定は、東日本大震災の復旧及び復興の状況等を勘案し別に法律で定める日までの間、その適用を停止する。(「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律」より引用。下線、強調は引用者による) ただし、この間に、東日本大震災の復興予算は執行率が低く、未消化のまま繰り越されていることが指摘されるようになったし、ガソリン価格の高騰が続いているが、時限的な事業者向け補助金を通じて場当たり的対応がなされてきた。 特に補助金を徐々に減額する仕組みになっていることから期限末にガソリン価格が高騰し、補助金継続が決まると一旦は落ち着くということを繰り返している。 国民民主党が主張するトリガー条項解除は、補助金による場当たり的対応ではなく、もともと想定していた方法で対応しようというものである。