与党に極大な貸しを作り、野党にも賛同できる…国民民主党「自公連立入り拒否」の打ち手がなぜうまいと言えるか?
■ 野田立憲による政権交代の可能性は極めて小さい 総選挙の結果を振り返ってみよう。 自公の獲得議席数は215。野党・無所属は250。定数465で過半数は233。 前述のとおり、首班指名選挙は過半数を争うゲームになっている。国民民主党の議席数は28。保守系や裏金疑惑で無所属扱いになっている候補者も含まれる野党・無所属から28引けば過半数を割り込んでしまう。 さらに自民党は裏金疑惑などが理由で、自民党非公認で選挙を戦った4名と与党系無所属の2名の計6名を自民党会派に戻すことを決めたと報じられているから、野党第一党立憲民主党代表の野田氏の名前が首班指名選挙において過半数を超えるのは極めて難しくなることがわかる。 維新の獲得議席数は38。大阪の小選挙区では公明党と激しく争いながらすべての選挙区で勝利したものの、全国でみれば選挙前44から38に議席を減らした。音喜多政調会長が落選するなどし、浅田均氏らをはじめ代表に敗北の責任を問う声もあがっている。 改革と対決姿勢を鮮明にしてきたが、国民民主党が足早にポジションを確定させたのに対して、未だに党としてのポジションははっきりしない。 自民公明との連立も、立憲民主党との全面協力も難しく、いずれにしても野田氏の首班指名に協力するかは定かではない。 総合すると、自民党を切り崩すなどの剛腕シナリオなどを除くと、野田氏が首班指名を受け、政権交代が起きる可能性は極めて小さくなったのではないか。
■ 国民民主党の打ち手がなぜうまいといえるのか このような環境のなかでの、国民民主党の打ち手はなかなかうまい。 首班指名選挙で玉木代表の名前を書くという選択は、建前として、与党と野党双方の顔を立てることができる。 支持者に向けても、ある意味当然ともいえる是々非々という「これまでの方針」の一貫性を維持できる。 しかしながら、首班指名では結果論として政権交代を起こさず、石破総理過半数を強く後押しすることから、与党に対して極めて大きな「貸し」を作ることになる。 しかも自民党も公明党以外の連立は考えていないと公言しているし、国民民主党もまた連立に参加しないと述べている。 それらを前提とすれば、国民民主党は今後、立憲民主党などとともに内閣不信任案に与することもできる。 ただ提出するだけではなく、維新の協力や自民党内から造反組が出るなどすれば、数の上では十分に不信任案成立の可能性があるのだから、今後、自公政権に対しても、野党に対しても、国民民主党は極めて大きな存在感を持つようになるだろう。 言うまでもないが、不信任案が成立してしまえば、内閣は総辞職か議会の解散を迫られる。