太陽光発電施設の建設でガイドライン制定を 長野県に地域住民ら要望
山林への太陽光発電施設の建設で土石流などの災害のおそれがあるとして、長野県上田市の3地区住民が28日、県に対策を要望しました。住民は、建設計画が住宅地域の背後の山林の造成を伴い、将来にわたり危険性があるにもかかわらず法的規制がほとんどないと指摘。県として十分な安全を見込んだ発電事業者向けのガイドラインを設けるよう求めています。
工事の結果「土砂崩れなどを誘発する恐れ」
全国的にも事業用の太陽光発電施設をめぐる問題は表面化しており、エネルギー政策推進の一方で地域住民とのトラブルの解決は国・自治体の課題になりつつあります。このため自治体では環境アセスメントの適用やガイドラインの設定などの取り組みも始まっています。
県に対策を求めたのは上田市の飯沼自治会(中村賢示会長・約600戸)、同市東山城下(ひがしやましろした)地区メガソーラー設置反対期成同盟会(沓掛勝也会長)、同市町組(まちぐみ)自治会(池内紀男会長・約300戸)の3地区住民。いずれも千曲川左岸の丘陵や里山に囲まれた地域で、太陽光発電施設の建設予定地の山林近くに住宅が密集しているところもあります。 住民側はこの日、中島恵理副知事に手渡した要望書で「太陽光発電施設は土石流災害警戒区域周辺部などの危険個所で浮上しているだけでなく、建設は広大な土地を必要とし、森林の大規模な伐採や土木工事の結果として土砂崩れ、鉄砲水などの土石流災害の誘因となるおそれがある」と指摘。「住民の安全確保のため事業用太陽光発電施設は計画立案の段階で立地の適否の判断のための地域のリスク情報を提供し、適正な建設のための指針などを示した事業者向けの建設ガイドラインを制定してほしい」と申し入れました。
県側は「市町村マニュアル」で対応可能との認識
これに対し県側は、昨年から関係部局で検討して取りまとめた「太陽光発電を適正に推進するための市町村マニュアル」を提示。事業を回避することが望ましい区域などで発電事業が計画された場合は、地域との合意形成や関係条例との照合などで対応するフローチャートに沿って市町村に取り組んでもらう方針を示しました。 中島副知事は「市町村マニュアルは事業者にとってガイドラインとなるようにしたい。事業者に分かりやすい説明をしていきたい」と、市町村マニュアルで対応できるとの認識を示し、関係課長も「ガイドラインは法的な根拠がないので、権利の制限などの強い対応はできない」と、市町村マニュアルの実効性を説明しました。