スニーカーブーム沈静化どこ吹く風 スイス発「オン」、急成長支えるイノベーション
時価総額は106億米ドル(約1兆6218万円)
WWD:製品開発で重視するのは。
ベルンハルド:常に心掛けているのは、(タウンユース用などでなく)まずパフォーマンス製品から開発すること。リサーチを重ねてデータを集め、新しい考え方を持ち込みイノベーションを起こす。例えばテニスシューズは(スイス出身でグランドスラム達成者の)ロジャー・フェデラー(Roger Federer)と組み開発した。ロジャーが履けるならパフォーマンスの信頼性を担保でき、消費者にとっても有益。当社の全てはイノベーションから始まる。それはサステナビリティ領域でも同様だ。
WWD:サステナビリティ領域では、循環型シューズのサブスクリプションサービス“サイクロン”を22年に本格開始した。
ベルンハルド:シューズを所有しないという考え方であり、パラダイムシフトだ。買わなければいけない、捨てなければいけないという考えを捨ててほしい。ただ、パラダイムシフトは簡単ではない。消費者に行動変容を促していく必要があるが、動画配信のサブスクサービス「ネットフリックス」が示すように、それは可能だと思っている。
WWD:創業からたった15年弱で、「ナイキ(NIKE)」「アディダス(ADIDAS)」と共に並べられるブランドになった。何がそれを可能にしたのか。
ベルンハルド:創業時、共同創業者の2人に「既に市場にはたくさんのランニングシューズがあり、これ以上は必要ない」と言われたが、ランニング感覚が従来とは違うシューズなら、消費者は求めるはずと説得した。今までなかった新しいものを生み出すイノベーションこそ、われわれの成長の源泉。あらゆる面で先駆的でありたい。
スニーカーは「これまでの売り方が古くなっただけ」
WWD:イノベーションを生み出す組織をどのように作っているのか。
ベルンハルド:私自身がアスリートであることも大きい。立ち上げ当初は知識もなかったが、自身も被験者となって、ラボでさまざまなテストを重ねてきた。早期から優れた研究者を集め、ランニングだけでなく、それ以外のスポーツにも応用できるチームを作った。今グローバルで約3000人の社員がいて、うち製品開発に関わる部門は350人ほど。チューリッヒにラボがあり、生産国のベトナムにも開発チームのメンバーがいる。会社としては、スポーツやアパレルの業界外から積極的に人を採用してきた。業界内から雇うと、過去の経験以上になりにくい。スイスにはランニングシューズメーカーの歴史がなく、だからこそ業界外から人を雇い、新鮮な考え方を持ち込む必要もあった。外部からの目線で自問自答を繰り返している。具体的には、テスラ、グーグル、レッドブル、アップルなどから来た社員もいる。