『かくしごと』関根光才監督 企画・脚本に対してのベストアプローチを採る【Director’s Interview Vol.410】
熱量の設定をどこに置くか
Q:今回の撮影は、目を引く構図やカメラワークは抑えめに、ドラマに集中しているような印象がありました。何か意図したものはあったのでしょうか。 関根:これまでの自分の作品と比べると今回は静謐な感じが多いので、何故変えたのかと、よく聞かれます。これも先ほどのリハーサルの話と近いのですが、原作や脚本が持っているものに合わせようという感覚なので、これまでの作品とは、たまたま対極になっただけ。カメラマンの上野千蔵くんとも、「今回はカメラを動かす必要はないね」と自然とまとまりました。撮影プランとして全て手持ちでやることも考えましたが、今回は日本家屋で撮るシーンも多く、素直にカメラを置いて撮った方が合っていましたね。 Q:CMやMVで数々の作品を共にしてきた上野千蔵さんとは、芝居モノの映画としては初タッグです。今回はなぜ上野さんだったのでしょうか。 関根:脚本を書いているときから、この作品は上野くん向きだなと思っていました。彼が持っている日本的な情緒や自然に対する向き合い方などが特に向いているなと。彼とは長い間、CMやミュージックビデオ、短編映画など色々なものを作ってきましたが、それらと比べると長編映画は全然違ってくる。その辺はどうなるか見えない部分もあったのも正直なところです。 Q:実際に長編を一緒にやってみていかがでしたか。 関根:とても自然でひっそりとした佇まいの撮影が素晴らしかった。普通に呼吸するような感覚でこれまで一緒にやってきましたが、映画や長編となるとお互いの美学みたいなものがズレることもある。当然そういったこともゼロではありませんが、全体を通してみると極めてナチュラルに撮影できて、やっと一緒に映画を撮れてとても嬉しかったです。 Q:取り扱うテーマも相まってキャストの皆さんの熱を感じつつも、カメラは冷静に見つめているような感覚がありました。 関根:熱量の設定をどこに置くかということと、カメラの存在をどれだけ感じさせるかについては、結構議論しました。元々僕は、俳優がいい芝居をしていれば、カメラで煽る必要はないと思っている。千蔵くんは更にその感覚が強かったので、今回はより客観的になったところがあるのかもしれません。それぞれのシーンに対するショットも少ないので、もしかしたら他のスタッフは「これで終わり?」と思っていたかもしれませんね(笑)。
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