ドラマ『Eye Love You』について二階堂ふみがどうしても伝えたかったこと(前編)
チェ・ジョンヒョプがフィジカルで作る「フック」
──テオ役のチェ・ジョンヒョプさんとの共演はいかがでしたか? 二階堂 母国語ではないセリフを大量に言う、しかもそれに感情を乗せるって本当に大変だと思うんです。『VIVANT』(TBS 2023)のときにモンゴル語を話すシーンがあって、ほんの少しでしたけどすっごく大変でしたから(笑)。でも、ジョンヒョプさんはそこに果敢にチャレンジしてくださった。毎回ほんとうにフレッシュな空気を届けてくださる方で、脚本の段階では想像していなかったことが頻繁に起きるんです。毎回、「こんな展開のしかたがあるんだ」「こんなアイディアがあるんだ」とたくさんのアイデアに驚かされて、すごく勉強になりました。 ──撮影中に印象に残っていることはありますか? 二階堂 アイディアとは別の話ですが、すっごく足が速い(笑)。こちらに走ってこられるシーンを撮ったとき、速くてびっくりしました。でもそれがジョンヒョプさんを象徴しているというか、勢いとパワーがあって、エネルギーに満ち溢れているんですよね。それでいて、繊細な部分も持ち合わせている。その繊細さがお芝居にも現れていて……。こちらの感情の引き出しを開けてくださる瞬間がたくさんありました。 ──感情の引き出しを。 二階堂 レパートリーを増やしていただいたというか。動きが予定調和にならないんです。それこそ、1話でかなり遠い場所から「そこのキョロキョロしてるかわいい人!」と呼びかけてくるシーンひとつとっても、日本でドラマを撮っていてもなかなか出てこないアイディアだろうなと思うんです。二人の距離は遠く離れているのに、そうとは思えない声で大きいエネルギーがバッと飛んできたとき、そのエネルギーによって侑里が引き留められる。普通のリズムだとなかなか気持ちが追いつかない侑里でも、ぐっとそこにとどまらざるを得ない感情に持っていってくださるんですよ。エモーショナルというよりは、本当に物理的につい体が止まってしまうような。侑里は最初そのパワーにぐっと掴まれていったんだろうなという感覚でした。 ──単純に、ラブストーリーだから、感情のほうが重視されているとばかり思っていました。その感情を生み出すためのフィジカルなんですね。面白いです。 二階堂 やっぱり二人の関係が動いていくときに、気持ちだけで持っていくのってすごく難しいときがあるんです。でも、ジョンヒョプさんがそうやって引力のある演技をしてくれて、侑里を食い止めるポイントを残してくださるから……。そこにひっかかるようにして、テオさんのことが侑里も気になっていってしまう。ジョンヒョプさんのお芝居によって、心の中にいつの間にかフックがどんどんできていくような感じでした。 ──「毎回胸キュンシーンのある甘いラブストーリー」でありながら、それだけではないのは、ジョンヒョプさんや二階堂さんをはじめ、キャストやスタッフの皆さんの姿勢によるものなんですね。 二階堂 胸キュンシーンって不思議なもので、演じている側は冷静に「これは胸キュンになってるのかな」と考えながらやっているんですよね。ちょっと研究のようで、それが楽しかったです(笑)。放送したらしたで、自分たちが意図していない部分でキュンとしてくださっている方がたくさんいるから、やっぱりグッと来るところって十人十色なんだなというのも発見でした。