ガソリン価格が上昇 なぜ、“ガソリン値下げ隊”が登場しないのか?
ガソリンは生活に欠かせない物資なだけに、こうした時こそ国民が待ち望むのが、税の引き下げ議論だ。しかし、それが活発に聞かれないのはなぜか?そもそも「ガソリン値下げ隊員」だった民主党議員たちが、国会から姿を消してしまったことがある。隊長だった川内博史氏ら多数が、2012年の総選挙で軒並み落選。民主党不振の理由は、「暫定税率の廃止によるガソリン価格の引き下げ」など、2009年のマニフェストで掲げた政権公約をことごとく実行できず、国民に「裏切られた」思いを抱かせた点が大きい。 もちろん民主党政権も、暫定税率の廃止ができなかった代わりに、ガソリン高を防ぐ手立てを試みた。トリガー制度と呼ばれ、「ガソリン価格が3か月連続で1リットル160円を上回れば、暫定税率分の25.1円の課税をストップする」というもの。ところが、これも東日本大震災(2011年3月)で「復興のための予算が必要」ということで、凍結してしまった。 もはやガソリン値下げの希望はないのか。だが、国会の議論をつぶさにみると、議論が全くないわけでもない。5月27日の参議院国土交通委員会で、金子洋一議員(民主党)は「ガソリン税、暫定税率分の廃止」を政府に求めた。しかし、これに対し、政府側は「国、地方の極めて厳しい財政状況や地球温暖化対策の必要性を踏まえれば、その税率の水準は引き下げるべきではない」とあっさり否定。仮に廃止すれば「約1兆3000億円の減収になる」として、廃止は論外とも言わんばかりだった。最近1か月の間に「パチンコ税」や「携帯電話税」の導入検討が報じられるなど、税収を増やすことに躍起の政府与党にとって、今ある貴重な収入源を手放す選択肢はあり得ないのだろう。 そもそも、ガソリン値下げの議論が低調なのは、民主党が2009~12年に政権につきながら値下げを実現できなかったため、今になって値下げを言いづらいからではないだろうか?党政調副会長でもある金子議員に疑問をぶつけると、「そんなことは全くない。自動車にまつわる税は、根本的に見直す予定でした。今は2008年の時のガソリン値下げ隊のような派手な動きはないが、党内では同じ問題意識は持ち続けている。報道はされていないが、主張はしていますよ」と説明。「この秋の国会には、ガソリンを安くするため何らかの議員立法を提出したいと考えています」と語った。 石油情報センターは、今後のガソリン価格の見通しについて「原油価格について下がる要因がない。良くて横ばい」とみている。ガソリン値下げの活発な議論を、国民が心待ちにする日々はしばらく続きそうだ。 (文責・坂本宗之祐)