「国鉄改革の立役者」葛西が政界を牛耳る「国士」にまでなれたワケ…停滞期にあった東海道新幹線を大躍進させた驚異の手腕とは
安倍元首相が国士と賞賛した葛西敬之が死の床についた。政界と密接に関わり、国鉄の民営化や晩年ではリニア事業の推進に心血を注ぎ、日本のインフラに貢献してきた。また、安倍を初めとする政治家たちと親交を深め、10年以上も中心となって日本を「事実上」動かしてきた。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 本連載では、類まれなる愛国者であった葛西敬之の生涯を振り返り、日本を裏で操ってきたフィクサーの知られざる素顔を『国商』(森功著)から一部抜粋して紹介する。 『国商』連載第34回 『「近所のプール指導員が孫に無理矢理…」「プロパンガスの周辺にマッチが…」労働組合と対立する陰でJRの社長家族に忍び寄る恐怖の影』より続く
「一本足打法」のワケ
JR東海は民営化以降、「一本足打法」と呼ばれるように新幹線の事業収入に支えられてきた。現在、名古屋や静岡地区の都市圏を中心とする12の在来線を運営しているが、事業そのものが新幹線の運営会社という色合いが濃い。決算の数字で見ると、それがよりいっそうはっきりする。 2021年3月期でいえば、グループ連結営業収入9351億円の76%が、鉄道を中心とする運輸業収入だ。「ジェイアール東海ホテルズ」や「ジェイアール東海ツアーズ」といった旅行部門、「ジェイアール東海建設」など、グループ企業すべての売り上げを足し合わせても、残り24%の収入にしかならない。この運輸業収入6572億円のうち、東海道新幹線が5898億円を売り上げ、収入の90%を占める。つまり在来線の収入は10%しかないのである。東海道新幹線は年間5000億円の利益をもたらしてきたといわれてきた。新型コロナで新幹線の乗客が減る前の2019年3月期決算で見ると、運輸業の利益だけで6176億円もあるので、9割とすれば5000億円を優に超えていることになる。 もっともこの稀な収益構造は、日本全国の鉄道路線を一体化運営してきた旧国鉄時代から分割民営化後に変わったわけではない。