「やらなアカン!」高齢化進む村、選挙に立候補した移住者の女性 全国に広がる選挙のない街
川内村で“異変”…SNSで“立候補”宣言
去年11月、川内村で前代未聞の異常事態が起きた。村議会議員選挙で定数10に対して立候補したのは1人少ない9人。記録が残る1947年以降で初めての「定数割れ」となった。無投票で当選した議員は、すべて男性で、平均年齢は70歳を超えていた。震災後に村に戻って来た村民は8割ほどだが、その間、過疎化と少子高齢化が一気に進み、65歳の以上の高齢者が5割を超えているという。 「大好きな川内村の未来に希望の花をたくさん咲かせたい」。 子育てをしながら花屋を切り盛りし、村で充実した日々を送っていた福塚さん。日々成長する子どもの姿を傍で見つめていると、徐々にある思いが湧いてきたという。 そして…4月9日、その思いを自身のSNSに記し公開した。 「今なんだ!!と思い立ち、補欠選挙に立候補しました。このまま何もしなければ、十数年後には(人口が)1000人をきると言われている川内村。移住者として、子育てをする母として、事業主として、女性として、私の立場や目線だからできることを村政の中で尽力したいと思います」。 村外の出身で立候補する不安について尋ねると福塚さんはこう答えた。 「無いです。(定数割れで)川内村の未来に不安を感じたことのほうが大きかったので」。
全国で増える“選挙のない街”…「なり手不足」が招く「議会の侵食」
全国町村議会議長会によると、全国的にも無投票または定数割れの団体数は年々増え続けていて、2023年5月から2027年4月の4年間では、全体の3分の1を超える34.1%の議会が無投票になる可能性があるという。“選挙がないままに代表者が決まる”。この状況について全国町村議会議長会は、行政監視など各機能への影響や、地方自治の弱体化といった問題を招くと指摘する。 「今、手を打たないと民主主義の根幹を揺るがしかねない」。 地方自治に詳しい大正大学の江藤俊昭教授は、なり手不足による「議会の浸食」に警鐘を鳴らしている。 「議員の固定化が生じてしまう。そうすると、多様な議論を深める機会が失われてしまう」。 深刻な「なり手不足」の要因の1つとして、江藤教授は議員報酬の低さを挙げる。 その議員報酬を巡って最近大きな動きを見せたのが、福島県東白川郡の矢祭町だ。財政健全化のため、16年前に全国で唯一の議員の日当制を導入したが、4月から「月額制」に戻した。今年3月の町議選は、町制施行以来初めての無投票。なり手不足への危機感があった。「日当制」を導入していたときは議員の報酬が減り、十分な活動ができなかったなどの不満の声が議員からあがっていたという。