U-19日本代表がなぜ快挙を?その舞台裏とは
アビスパ福岡U‐18から昇格したルーキーの冨安も、セカンドステージからボランチでレギュラーを獲得。チームは無念のJ2降格を喫したが、185センチ、70キロのサイズを生かした守備で奮闘した。 Jリーグが十数年来も抱えてきた課題に、高校やユースからJリーガーとなった選手が最初の1、2年で実戦の出場機会を激減させる点がある。プロ野球の二軍にあたるサテライトリーグが経費節減のために廃止された2009シーズン以降は、若手が伸び悩む傾向がさらに顕著となった。 危機感を抱いたJリーグは、2014シーズンから創設したJ3にJリーグ・アンダー22選抜を参戦させる。J1およびJ2でベンチ入りしない22歳以下の選手から、試合ごとにチームを編成。真剣勝負を通して成長を促す狙い青写真を描いたが、試合前日に集合して練習を一度だけ行う“寄せ集め”感のもとでチーム内の士気や緊張感が上がらず、2年で活動停止を余儀なくされた。 若手の強化育成が再びクラブに委ねられたなかで達成された、今回の二重の快挙。Jリーグの村井満チェアマンは「代表チームや選手たちの努力はもちろんのこと、Jクラブが日常的に選手育成に励んだ成果が出たのではないか」とクラブ側が積み重ねてきた努力を称えている。 育成組織からクラブひと筋で心技体を磨き、ポジションをつかみ取った中山と冨安だけではない。今大会のメンバーのなかでは、高速ドリブルを武器とするルーキーのMF遠藤渓太(横浜F・マリノス)もスーパーサブで22試合に出場。2年目のMF三好康児(川崎フロンターレ)も、セカンドステージだけで3ゴールをあげている。 PK戦の末に準々決勝でU‐19北朝鮮代表に苦杯をなめた2年前のメンバーを振り返ってみれば、J1でコンスタントに出場していたのはセレッソ大阪のFW南野拓実(現ザルツブルク)くらいだった。 「公式戦に臨むうえで、試合勘を含めたコンディション不足という問題が、いままではどうしても否めないところがあった」 2年前はU‐19日本代表コーチとして無念さを味わい、今大会で雪辱を果たした内山篤監督は、U‐20W杯を逃してきた歴代のチームとの違いをこう説明する。 「J1で試合に出ている選手が増えてきているし、あとはJ3で毎週末に試合をしている選手たちですね。ガンバの3人もそうだし、コンスタントに公式戦でプレーすることは、試合勘に対しては非常に大きい。18歳までは高校やユースで毎週のように試合をしているわけですから、それがガクッと落ちると、私たち以上に彼ら自身が不安になるんです。いくらいい練習をしても、試合をしなければサッカー選手ではない。たまに試合にでも『90分間もつかな』と考えるなど、メンタル面も同時に左右されていくので」