「紙代」「インク代」の高騰で 「印刷業」の倒産が急増、2023年度は10年ぶりの100件超えも
小規模事業者の倒産急増
2023年度の印刷業の倒産は2月までに91件となり、すでに2022年度(59件)を54.2%上回り、3月末までに100件に達する可能性が高くなった。100件に達すれば、2013年度(112件)以来10年ぶりとなる。一方、2月までの負債総額は197億8200万円で、こちらも2022年度(179億2000万円)をすでに上回っている。 2023年度の特徴は、負債額の大きい倒産が少ないことだ。2022年度の負債20億円を超える倒産は、冨士印刷㈱(東京、破産、負債43億5600万円)、土山印刷㈱(京都、民事再生法、同27億4400万円)、㈱東光社(東京、民事再生法、同21億円)の3件だったが、2023年度は音羽印刷㈱(東京都、破産、同20億5900万円)のみとなっており、1件あたりの負債額が小さくなっている。
近時の業界環境について関係者は、「倒産のみならず廃業も多く、ここ数年で取引先が相当数減っている」「ペーパーレスが叫ばれるなか、見通しは厳しい。社長の高齢化問題も根深い」「さらに値上げしたいが、値上げすれば販売量が落ちることが目に見えているため決断しにくい」などと話し、解決すべき課題は多い。 コロナ禍では、ゼロゼロ融資をはじめとする各種支援策が中小企業の資金繰りを改善させ、2021年度には2000年度以降最少となる46件にまで減少した。しかし、近時は原材料価格の高騰により紙やインク代の値上げが進み、資金繰りに窮する事業者が増えている。2024年度も業界環境が好転する材料は乏しく、倒産件数は高水準で推移するとみられる。