「ここにいる時点でラッキー」カープの196cm右腕・アドゥワ誠が無欲でつかみ取った5年ぶりの先発勝利
ヒール役を見事に演じ切った。 3月31日、横浜スタジアム。5年ぶりの先発マウンドに上がった広島のアドゥワ誠が、チームに今季初勝利を呼び込むピッチングを披露した。 【貴重写真】白スーツの衣笠、打席でエグい殺気の前田やノムケン、胴上げされる山本浩二、痛そうな正田、炎のストッパー津田恒美などカープ名選手のレア写真を一気に見る 開幕から2試合はDeNAのゴールデンルーキー度会隆輝の話題一色だった。開幕戦では同点3ランHR、第2戦では2ランHRを含む4安打2打点1盗塁。敵地はニューヒーロー誕生に沸いた。だが、第2戦の第1打席に広島の先発・黒原拓未が危険球を与えていたこともあり、この試合はプレーボールから不穏な空気が漂っていた。 1回2アウト二、三塁から梶原昂希に死球を与えると、スタンドからブーイングや怒号が浴びせられた。前日まで広島は完全な引き立て役だったが、マウンド上の長身右腕は大きな青い波にのまれなかった。 「楽しむことはできないですけど、そこまでは気にならなかったですね」 飄々と、やるべきことに集中していた。もともと雰囲気に流されるタイプではない。この日は特に気にする余裕がなかったほど、自身の投球に納得できていなかった。打者や審判でさえ、プレーを止めて風をよける場面があったほどの強風も影響した。 「捕手が構えたところに1球も行かなかったですからね。あんなことはさすがにこれまで1度もない」 死球を与えた1回に先制点を許した。2本の二塁打に2四死球、球数は20球を要したが、焦ることもなければ苛立つこともない。ただ、シンプルに「ゾーンの中に投げて散らばってくれれば」と割り切った。2回以降は走者を出しながらも、打ち気にはやるDeNA打線を打たせて取った。苦慮した強風がチェンジアップの変化量を上げたことも幸いした。結果、5回まで61球で3安打1失点。アドゥワは1点リードを守り抜き、マウンドを後にした。
残り1枠を勝ち取った先発ローテの座
ヒール役を演じ切った同期で同学年の姿が、球を受けた坂倉将吾には頼もしく映った。 「他人に干渉しないタイプですからね。緊張はしていたんだろうけど、周りにあまり左右されない。調子は良くなかったかもしれないけど、ストライクゾーンで勝負できていたし、球も強かった」 無欲で開幕ローテの最後の席を勝ち取った。キャンプ前から先発4本柱の大瀬良大地、九里亜蓮、床田寛樹、森下暢仁(開幕直前に右肘張りで離脱)は確定。新外国人のトーマス・ハッチも決定的な状況だっただけに実質1枠の争いだった。それでも昨季開幕ローテ入りした玉村昇悟や、昨季4勝の森翔平らとの争いを大外からまくった。 昨季4年ぶりに一軍登板を果たした中継ぎから、今季先発に再転向した。実は昨季途中に打診されたが、シーズン途中ということもあり断っていた。昨オフにあらためて先発起用の方針を受けても、何かを変えることはしなかった。 「どこで投げるにしても、準備は変わらない。(役割によっての調整法は)特につくっていない。アドバイスをもらって、それを出来るほど器用じゃないので、できることをやってきた」 キャンプから先発争いが続く中でも淡々と登板を重ねてきた。気づけば投球回が増え、一軍に残り、開幕3戦目の先発マウンドに立っていた。 貪欲な選手が集まるプロ野球界でも珍しいほどに、欲が感じられない。グラブにグラブと同系色のくまモンを刺しゅうするだけと地元熊本への郷土愛は控えめで、自己主張も強くない。オープン戦最終登板を終えたときのコメントが、アドゥワらしさを表していた。 「緊張はしないっすね。あまり自分に期待していないので。自分に期待している人が緊張すると思う。本当に自分には自信がないので。結果、うまくいったらラッキーぐらいに思っています」 シーズン開幕が目前となり、初の開幕ローテを勝ち取った高揚感に触れようとした記者たちは肩すかしを食らった。
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