プレミア12。元中日の豪州監督に「完璧」と評された侍J源田の二死セーフティスクイズ奇襲はなぜ成功したのか?
野球の世界一を決める「プレミア12」のスーパーラウンドが11日、ZOZOマリン、東京ドームの2会場で開幕。日本は豪州に3-2で逆転勝ちを収めた。先発の山口(巨人)が2点を先制される苦しい展開だったが、鈴木(広島)の3試合連続アーチで1点差。7回、代走・周東(ソフトバンク)が二盗、三塁を決め、源田(西武)が二死から意表を突くセーフティスクイズを決めて同点にし、8回に勝ち越しに成功。9回を山崎(横浜DeNA)が抑えた。日本は、今日12日、東京ドームで米国と対戦する。
「ずっと狙っていた」三盗成功
1点ビハインドの7回の攻撃を前に稲葉監督は“切り札”周東に準備をするように声をかけている。先頭の吉田(オリックス)がショートの頭の上を越すヒットで出た。 「迷わず」。稲葉監督は代走に周東を送った。 「絶対にこの回で僕が還って同点にしてやろうという気持ちで(代走に)出ました」 豪州バッテリーは日本の小技を警戒していた。 2回には鈴木の盗塁を刺し、5回には一塁走者の源田を牽制で刺した。 周東には、基本「行けたら行け」のグリーンライトのサインである。だが、牽制を2度投げ、タイミングを1球、1球変えてくるので、浅村(楽天)は、2ボール、2ストライクまで周東が走るのを待ったが動けなかった。2-2からついに仕掛けた。「思い切っていこう」と二盗に成功。だが、そのボールで浅村がスイングアウト。続く松田も三振に倒れる。 重苦しい雰囲気の中、周東は、次の仕掛けを狙っていた。 「二塁はむずかしかったが、三塁へはモーションが大きくていけるぞ」と稲葉監督。 ジャパンが世界に誇る技術である。 クイックモーションのタイムから盗塁の成功確率を弾きだし、投球の癖、傾向を瞬時に見抜く。「あそこはずっと狙っていた」という周東は、そのウィルキンスの隙を見逃さない。 カウント1-1からの3球目に、スルスルとディレー気味にスタートを切ると、一気に加速して三塁を落とした。これが衝撃の奇襲への布石となる。 打席の源田は、瞬時に周東の足を信じて、ある選択をした。 「周東が走ってチャンスを広げてくれた。相手のポジショニングを見て、自分のバッティングで普通に打つのと、セーフティして足を使うのと、どちらの確率が高いかなと思ったときに腹を決めてやりました」 三盗で動揺している豪州バッテリーの意表を突く。 源田は、なんとツーアウトからのセーフティスクイズ。 周東は「(バントは)正直ビックリした」と言うが、ツーアウトだから迷いはない。 「(源田さんを)信じてホームに突っ込もう」 源田が足を揃えてバントの構えをした瞬間からスタートを切った。 源田が、絶妙に殺したゴロは、投手正面より、若干、三塁寄りに緩やかに転がった。マウンドを駆け下りて、そのゴロを捕球したウィルキンスは、目の前を走り抜ける周東が気になったのだろう。一塁へ送らず、そのままタッチに走ったのだ。周東は体をかわし、そのまま滑りこんで左手でホームをタッチ。自ら両手を広げてセーフとアピールした。 「2アウトでしたからノーサイン。本人の意思。私もまさかと思った」 一塁ベンチの稲葉監督さえ驚かせた衝撃の結末。 「国際大会ではああいうところで何かやってやろうというのは非常に大事。大きな1点だった」 「会話」「一丸」「結束」をテーマにしてきた稲葉監督にしてみれば、坂本(巨人)に代えて初スタメンで起用した源田と、機動力の“切り札”周東の2人が以心伝心、絆と執念で奪った同点劇がたまらない。 「こっちが勝負に出たことを選手が理解してくれた」